特別編・ヘルマの軍規違反


「有給ください!」
「…何故?」
「それはその…私のお祖母ちゃんの入院の準備がありまして…」
「却下」
「何故でありますか?!」
「手術の日ならまだしも、別に入院の準備なら行かなくて良いと思う」
「じゃ、じゃあ手術です!!」
「じゃあって何?」
「ぐぬぬっ…」

いきなりこんな会話からで申し訳ございません!
ストップ、買い占め!第131先行実験隊「ハルプ」第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツであります!
ただいま3月19日の午後1時。お昼の休憩を終え、真っ先にハルトマン中尉の研究室のドアを叩いたであります!

「えと…さっきのお祖母ちゃんの入院は違くて、あの…えと…家族の人に留守を頼まれましたであります!」
「…レンナルツ曹長、今は寮暮らしでしょう?」
「うっ…!とっ、とにかく休みが欲しいであります!!」
「休んでも良いけど、帰ったら曹長のジェットストライカーがあると約束はしない…」
「それは明らかなパワハラであります!!!(泣)」


***


「はあ…ダメだったでありますかぁ…」

その後、小一時間に渡る説得をしたのでありますがダメでした…。
落ち込んで廊下を歩いていると………

「あ、ヘルマ!」
「………」
「おーい、レンナルツ曹長」
「………」
「ヘチマ曹長?」
「………」
「フランツ・フェルディナンド曹長?」
「…あ、シュナウファー大尉」
「あなたそんな名前じゃないでしょう…」
「どうしたんでありますか?」
「いやあ…下を向いてで歩いて、明らかに残念オーラが漂ってたから…何かあったの?」
「…シュナウファー大尉、もし!裁判になったら!」
「裁判?」
「裁判になったらですね…私が有利になる証言をお願いするであります!」
「は、はあ???」
「私、決めました!徹底的に戦うであります!」
「ちょ…ちょっと待って、話が見えないんだけれども…;;」









私は自室に戻り、バッグに衣服などを入れていたであります...

「えと…軍服の上OK、下OK、歯みがきセットOK、ズボンOK、おもらしした用に予備OK…そして…例のアレOK!よし、完璧であります!」

出発は夜明け前の3時!結果、ハルトマン中尉やシュナウファー大尉を裏切る結果となりますが………
こんな娘でごめんなさい、ここで過ごした日々…楽しかったであります(泣)


***



まだ日が出ていない…と言うか、誰もいない倉庫にそおっと入るであります...

「私のジェットストライカーはと…暗くてよく見えないであります;;あ、あった!」

閉まっている倉庫から引っ張り出し、ここでエンジンを始動すると音が大きくバレてしまう可能性があるので近くの丘まで持って行くであります;;

「おっ…重いっ…;;;」




20分ほどかけて、少し基地が遠く見えるような丘でエンジンを始動。そのまま発進するであります!

「シュバルツェカッツェ(黒猫)2番、発進するであります!!」

そうして、ロマーニャ・ベネツィア方面に飛んだであります...















































ゴオォォォォッ...

いくらシールドを張ってるとは言え、少々寒い感じがするであります。
もう一枚着こんでくれば良かったでありますねぇ…

…あんま今は考えたくないでありますが、もしこの無断でストライカーを使ったら
…うん、業務上横領罪でありますよね??いや、もしくは窃盗罪…;;;
今からでも遅くないであります、帰ろうかなあ…?;;
…いや!例のアレを渡すまでは!!!!
私はバルクホルン大尉にアレを渡すまでは帰れないんです、枕元にポッと置いてすぐ基地に戻るんであります!!

と、顔をパンパン両手で叩いたであります!!
………んっ!?

「もしかして…?」

赤い光が見えるであります…

「でも今日は確か、輸送機などはなかったハズ…!!」

やはりあれは…ネッ、ネウロイであります!しかも大型の!!!!
…ごめんなさい、バルクホルン大尉…私はまず軍人であります…!!
やはり軍人としての全うな義務を果たすべきでありまして…っ!!

すぐさまポケットから無線を取り出し、

「こちらシュバルツェカッツェ2番シュバルツェカッツェ2番、司令部聞こえるでありますか??!!北北東の方角から大型ネウロイ接近中、ただちにナイトウィッチの派遣をお願いします!到着までの間、私が足を止めます!!!!」


***





「………」

あの後すぐ、無事にシュナウファー大尉率いる第1夜間戦闘航空団第4飛行隊が到着。
私も応戦したであります…が!基地に帰ったらもう大変;;
まあ………ねえ?察してくださいであります;;;

まあ司令に殴られた…であります。そして罰として、2日間の営倉入り。
…後からシュナウファー大尉から聞いた話なのですが、ハルトマン中尉が直談判しに行って除隊だけはやめるよう懇願。
結果的にネウロイも発見・退治できたことから、2日間の営倉入りだけで済んだんだそう。

コツコツコツ...

「…レンナルツ曹長」
「ハルトマン中尉」
「もう…出て良い」
「はい…であります…」
















パシンッ!!!!

営倉から出てすぐ、私はハルトマン中尉に平手打ちされたであります…

「…馬鹿」
「もっ、申し訳ございませんであります…っ」
「何で言わなかったの…?」
「………」
「バルクホルン大尉に会いに、ロマーニャ方面へ行こうとしたんでしょう?」
「…はい」
「正直に言ったら、私だって…501部隊へ、ストライカー部品の運送名目であなたを派遣させた」
「………」
「バルクホルン大尉をお祝いしたいのは、私も一緒…」
「………」
「しばらく、頭…冷やしなさい」
「申し訳ございません…」

すると急に、

ギュッ...

「ハッ、ハルトマン中尉…?」
「心配させないで、あくまでもあのストライカーは試作品なの…」
「ごめんなさい…」
「まだ長距離の実験もしてないから…」
「もう二度としません…っ」

離れると…いきなり手に何かを握らせられたであります。

「あなたは2日ほど頭を冷やした方が良い」
「あの、これ…」
「今日は自分の部屋に戻りなさい」

そう言うとスタスタ自分の研究室に戻るハルトマン中尉。
手に握らせられたのは………

「何でありますかこれ…『アーヘン発ベネツィア行き』…航空券っ??!!」


***


【第501部隊基地内のエーリカ・バルクホルンの部屋】

「えぇいハルトマン!何故ズボンを履かないのだ!?」
「だって…ないんだもん」
「きっ、貴様…っ!!それでもカールスラント軍z(ry」

コンコン...

「あのぅ…バルクホルン大尉」
「おう、なんだ宮藤」
「お客様です」
「客?私にか?」
「はい。以前この部隊に来た方なのですが…」

キイッ...

「…レ、レンナルツ曹長」
「あ、やっほ♪」
「………」

なんだろう、バルクホルン大尉の顔を見た瞬間に私…っ!!

「うっ…ううっ…」

今まで我慢してたものが一気にこみあげてきて…っ!!

「バルクホルン大尉っ!!!うっ…ううっ…うわ~んっ!!!!」
「っ?!ちょ…どうしたレンナルツ曹長!?何故泣いている?!」
「だって…だってっ!!うわ~んっ!!!!」
「え、えっと…あの…」
「…とりあえず、ギュッとするか頭を撫でたら?」
「あ、うん…そうしよう」

するとバルクホルン大尉は優しく私を抱きしめ、頭を撫でてくれたであります...

「どうした…?何があった…?」
「私…軍人として踏み外す行動を…っ」
「???」

私は15分以上、パルクホルン大尉の胸で泣いてしまったであります…


「落ち着いたか?」
「はい…であります」

いつの間にかハルトマン中尉…あ、エーリカ・ハルトマン中尉でありますよ?…は外で出てしまってこの部屋は私と大尉2人っきりであります。

「…さっき、ミーナから聞いたがお前ってヤツは…」
「もう二度としません…であります」
「まっ、私は以前こんなことを聞いたことがある。『失敗は尊い月謝である』とな」
「はい…」
「人は失敗をしないと、成長はしない。今回の行動は…その…」
「…正直、営倉に入った時は軍を辞めることも考えたであります。けど…ネウロイを目撃した時、バルクホルン大尉よりネウロイを優先しました。今自分が何をすべきか…を冷静に考えたんです、営倉で」
「そうか」
「やっぱり…やっぱり、私は軍務が大事なんだなあって。戦いが終わった後、なんでこんなバカな真似をしたんだろうって…」
「…なあ、この話止めにしないか?」
「へ?」
「いや…その…お前はじゅうぶん反省した!それで終わりだ」
「でもカールスラント軍人として…」
「なんだ、叱られたいのか?」
「そんな訳では…」
「じゃあ終わりだ。コーヒー飲むか?とびっきり甘いの」
「はっ…はいでありますっ!!!」

…そうして、温かいコーヒーを持ってきてくれたであります。

「そういや、何故ここに来ようと思ったんだ?」
「…あ!」
「どうした?」
「えと…この…」

急いでリュックの中から例のアレを…

「少し遅くなりましたが…バルクホルン大尉!お誕生日、おめでとうございます!!!」
「…へ???」
「これ…私とクリスさんで選んだプレゼントです!」
「クッ、クリスとか??!!」
「はい…あとお手紙も貰ってます」
「お前…クリスと仲が良いのか…」
「はい!…まあクリスさんはロンドンに居るので、1~2か月に一度しか会えませんが;;」
「ありがとう!」

ギュッ...

また抱きしめられたであります!
…あれ、何時もならテンションMAXなのに今日はその…色々あった後だから、なんかその…心地よい?と言うか…

「本当にありがとう!」
「このプレゼントを渡したくて…ここに来ました」
「これからもクリスと…仲良くしてやってくれ」
「………はい!であります!」
「その笑顔!それでこそレンナルツだ!」

もうしばらくこのままでいても…良いでありますよね…?







【おわり】



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