天使ミーナVS悪魔ミーナ RETURNS


「ん……」
燦々と降り注ぐ朝の日差しに照らされ、私は目を覚ます。
窓の外からは小鳥たちの気持ち良さそうな囀りが聴こえてくる。
「やあミーナ、起きたかい? 今日は良い天気だね」
目を覚ましてからしばらくの間、昨日の出来事を思い出しぼーっとしていると、隣から明るく陽気な声が私の名前を呼ぶ。
「グ、グンドュラさん……」
朗らかに微笑む彼女を見て、私は自分の顔が真っ赤になるのを感じる。
昨日の出来事がいっそ夢だったらどんなに良かったことか。
「昨日は楽しかったよ。君の意外な一面が見れてね」
「あ、あなただって、いきなりあんな事……」
私はシーツに包まり俯きながら、グンドュラさんから目を反らす。
「ごめんごめん。でも、あそこでああしなかったら逆に私がやられていた。そうだろ?」
「そ、それはその……」
明るい口調でそう語るグンドュラさんに私は何も言い返せなくなってしまう。
そう、全てのきっかけは昨日の夜……

――――――――――――

――1947年3月、バルクホルンの家

「いやー、寮を抜け出して夜の街に繰り出したのが上官にバレた時はさすがのボクも終わったと思うね」
「あはは! 伯爵面白~い!」
その日は、トゥルーデの家で久しぶりにカールスラントのみんなで集まって昔話に花を咲かせていた。
ロスマンさんが誕生日の近い私とグンドュラさんとトゥルーデのために作ってくれたケーキを肴に、他愛のない話で盛り上がる。
「お、おい……エーリカもクルピンスキーもクリスが上で寝てるんだからもう少し静かにしてくれないか?」
すっかりできあがってるフラウとクルピンスキーさんに対して、トゥルーデが呆れながら言う。
「そっか、クリスちゃんもう寝てるんだね。それじゃあクリスちゃんのベッドに突撃と行こっかな」
「おっ、いいね~伯爵。私も行くー!」
「き、貴様ら……ふざけるな~!」
トゥルーデが顔を真っ赤にさせながら、クリスちゃんの寝室へ向かおうとしたフラウ達を追いかけまわす。
「うわっ、トゥルーデが怒った!」
「逃っげろ~」
「逃がすか~! 待て!」
えっと……なんて言うかトゥルーデが一番この場を騒がしくしているんじゃないかしら。

「やれやれ……一番騒がしいのはバルクホルンじゃないか」
グンドュラさんも私と同じ事を考えていたらしく、走り回る3人を見ながら呆れたように呟く。
「本当ね……でも良かった、ああやってみんなとまた大騒ぎするトゥルーデが見られて。
彼女、一時期自暴自棄になってたみたいだから……」
ロスマンさんが複雑そうな表情でトゥルーデの方を見ながら言った。
それを聞いたグンドュラさんも腕を組み、考え込むような表情になる。
「それもそうだな。ミーナもあの時は大変だっただろう? その……色々と」
「そうね、辛くなかったと言えば嘘になるけど……フラウや501のみんなが私たちを
支えてくれたから、辛かった出来事も乗り越えられたわ」
私は当時の事を思い出しながら、グンドュラさんの問いにそう答える。
トゥルーデやフラウや美緒、それに501のみんなのおかげで今日の私があると言っても過言ではない。
本当、素晴らしい"家族"を持ったものだと心から思えた。
最も、その家族達に頭を悩ませられた事もたくさんあったけど……
そんな事をロスマンさん達に語りながら、私はワインを飲み進めた。

――数十分後……

「駄目だ~もう歩けない……先生、おんぶして」
「できるわけないでしょ……ほら、しっかりしなさい」
ロスマンさんが顔を真っ赤にしたクルピンスキーさんの肩に手を回して身体を支える。
「どうしたの先生~? こんなにひっついちゃって今日は随分大胆だね~」
「何馬鹿な事言ってるのよ。じゃあトゥルーデ、私とニセ伯爵は奥の寝室を借りるわね」
「ああ分かった。エーリカ、お前はどこで寝る?」
トゥルーデが寝室に向かうロスマンさん達を見送りながら、真っ赤な顔で酔いつぶれているフラウに問いかける。
「にひひ~。私、トゥルーデと一緒に寝たい~」
フラウがトゥルーデにハグしながらそう答える。
抱きつかれたトゥルーデは、まんざらでもなさそうな表情で頬を赤らめた。
「……分かった分かった、ちょっと待ってろ。グンドュラはどうする……って、寝てるのか」
「う~ん、むにゃむにゃ……」
トゥルーデは、気持ち良さそうに眠っているグンドュラさんの身体を揺すって起こそうとするも、中々起きる気配がない。
「仕方ない、寝室まで連れてってやるか」
見かねたトゥルーデがグンドュラさんを抱え上げながら言った。
「ミーナ、グンドュラと同じ部屋でいいか?」
「ええ、構わないけど」

≪数分後、2階のとある部屋≫

「これでよし、と」
トゥルーデがグンドュラさんをベッドに乗せ、身体の上からシーツをそっとかける。
「それじゃお休み、ミーナ」
「お休み~、ミーナ」
「ええ、お休みなさい。トゥルーデ、フラウ」
トゥルーデとフラウを見送った後、寝巻きに着替えて眠りに就こうとしたちょうどその時、
グンドュラさんがごろんと寝返りを打つのが見えた。
寝返りを打った拍子にグンドュラさんの身体を包んでいたシーツがベッドからずり落ちる。
「ん~、むにゃむにゃ……」
「あらあら、グンドュラさんったら……」
私がシーツをかけ直すためにグンドュラさんに近づいた時、不意に彼女のお尻が目に入る。
「グンドュラさんってすごく形の良いお尻、してるわね……」
彼女の丸みを帯びた柔らかそうなお尻を見てたら、自分の中でもやもやとした気持ちが湧き上がってくる。
ああ、触りたいわ……

『触っちゃいなさいよ、ミーナ』
(出たわね、悪魔ミーナ!)
久しぶりに自分の中の悪魔が私に囁きかけてきた。
『ミーナ、これは今まで501の隊長として頑張ってきたあなたへのご褒美よ。
グンドュラさんのお尻を好きなだけ触りなさい』
(で、でも……)
確かに今のグンドュラさんは無防備だ、触るには絶好の機会と言えるだろう。
しかし、今の自分にはまだかろうじて理性が残っていた。
『悪魔ミーナの言うことを聞いちゃ駄目よ、ミーナ!』
(天使ミーナ……!)
これまた久しぶりに天使の自分が心の中で囁きかけてきた。
『いかなる理由があろうと、相手の合意もなしにお尻を触るなんて人として最低よ!』
(そ、そうよね……)
『何よ! 今まで一度も私に勝ったことないくせに!』
悪魔ミーナが天使ミーナにそう言い返す。
そう、私の中で天使と悪魔が対立を始めると勝つのはいつも決まって悪魔ミーナだった。
その結果、いつも私は自分の欲に負けて暴走してしまい、隊のみんなに迷惑をかけたものだ。
(や、やっぱり合意もなしにお尻を触るのは良くないわよね……)
私が自分の欲を振り払おうとしたその時、悪魔ミーナが再び囁きかけてくる、
『いいことミーナ? ここでグンドュラさんのお尻を触らないというのは彼女に対する冒涜よ!
ウィッチ達の健康的なお尻を触る事こそ、あなたの義務なのよ!』
悪魔ミーナのその言葉で自分の中で何かが吹っ切れた。
そうだ、ウィッチのお尻を触る事が私に課せられた義務なのだ。

「そうよね、ちょっとだけなら……いいわよね?」
私がグンドュラさんのお尻に触れようとしたその瞬間、彼女はむくりと起き上がり、私の腕をつかんできた。
「え?」
「やれやれ、お尻好きって噂は聞いてたけど本当だったんだね。眠ってたらそのままやられるとこだった」
「お、起きてたの?」
私は胸をドキドキさせながら、グンドュラさんに訊ねる。
「ああ。『グンドュラさんってすごく形の良いお尻、してるわね……』辺りからね……えいっ」
「きゃっ!」
私はそのままグンドュラさんにあっさりと押し倒されてしまう。
さすがフラウ、トゥルーデに次ぐ撃墜数第3位のウルトラエースなだけあるわね……って、感心してる場合じゃない。
この状況、かなりマズいんじゃないかしら?
「私のお尻を触りたかったのかい? でも、私からしてみれば……」
グンドュラさんが私のお尻に手を回し、ズボンに手をかけてそれをするすると脱がしていく。
「ちょ、ちょっと……」
「君のお尻のほうがよっぽど興味深い」
グンドュラさんはそう微笑むと、私のお尻をそっと撫でてくる。
「あぁ……ぁんっ」
お尻を撫でられるのが気持ちよくて、私は思わず声を洩らしてしまった。
「グ、グンドュラさん……はぁっん……」
お尻を撫でる手が段々激しくなり、それに呼応するかのように私の声も大きくなる。
「これが噂の200機目撃墜を達成したというお尻か……確かに素晴らしい触り心地だ」
「そ、それは言わないでよ……あぁん」
「ミーナ、もっと気持ち良くしてあげるね」
そう言って、私のお尻を優しく揉んでくるグンドュラさん。
お尻を揉まれる感覚に私はびくりと身体を震わせる。
「グンドュラさん……ダ、ダメっ……あっ、ぁん」
「ミーナ、可愛いよ」
グンドュラさんのその言葉を最後に、私の意識はそこで途切れた……

――――――――――――

「おーい! ミーナ、グンドュラ! 朝食ができたぞ」
回想が終わると同時に、下のほうからトゥルーデが私たちを呼ぶ声が聞こえてきた。
下から漂ってくる朝食の美味しそうな匂いが私の食欲をくすぐる。
「分かった、今行くよー!……さてと、それじゃ私は先に行ってるよ。ミーナも着替えたらすぐに来てね」
「え、ええ……」
私は1階へ降りたグンドュラさんを見送った後、自分のお尻をそっと触ってみた。
昨日彼女に触られた感触がまだ残っているような気がした。
「また今度、触ってもらおうかしら……」
私はズボンを穿き替えながら、不意に呟く。
たまにはこんなスリルも悪くないわよね?

~Fin~


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