Magic Box Ⅱ
「ジェーンに私をプレゼントしようと思うんだ」
時刻は23時を少し過ぎた頃、私とティナが談話室でトランプで遊んでるところに
ドミニカがやってきて、不意にそんな事を言うもんだから思わず吹き出しそうになった。
「えっと、今……なんて?」
「ほら、この前の私の誕生日に2人がジェーンをプレゼントしてくれただろう?
それと同じ事を私もやろうと思ってな」
と、部屋の時計を見ながらドミニカが言う。
そう言えばあと数十分もしないうちにジェーンさんの誕生日ね。
「つまり、またぼく達に協力してほしいってこと?」
「ああ、そういう事だ」
「ぼくは別にいいけど……パティはどうする?」
「もちろん協力するわ。ジェーンさんの反応も見てみたいしね」
「よし! そうと決まれば善は急げだね。ぼく、隊長からおっきな箱借りてくるよ」
悪戯っぽく微笑みながらティナは一旦談話室を後にする。
さてと、それじゃあ私は主役の大将さんに飾り付けでも施すとしますか。
――それから10分後
「後はここをこうして……これでよし、と」
「お、おいパティ……ちょっと巻きすぎじゃないか?」
「え? そんな事ないと思うけど……ところでドミニカ、さっきから気になってたんだけどその箱は何?」
全身をリボンでぐるぐる巻きにされても尚、ドミニカが大事そうに抱えている小さな箱を見ながら私は尋ねる。
「ああ、これはさっき私とルチアナで作ったジェーンのバースデーケーキだ。最も、私は横で見てただけだけどな」
「要はそれ、ルチアナが1人で全部作ったのね」
「まぁ、そうとも言うな」
ニヤリと笑いながら、私のツッコミにそう言い返すドミニカ。
「隊長に頼んでおっきめの箱、貰ってきたよ」
ちょうどそこに、大きな箱を持ったティナがニコニコ顔で談話室に戻ってきた。
よし、これで準備はOKね。
「それじゃあドミニカ、私たちはジェーンさんを連れてくるから箱の中で待っててね」
「ああ、頼む」
私たちはリボンでぐるぐる巻きになってるドミニカを箱に入れて、その上からそっとフタを被せた。
後は箱の中の眠り姫を目覚めさせる王子様を連れてくるだけね。
――更に10分後
「パティさん! マルチナさん! どこに連れてくつもりですか?」
「今に分かるよ。ほら、早く早く」
私とティナはジェーンさんの手を引っ張って彼女を談話室まで連れて行く。
「ささ、入って入って」
「は、はい……えっと、この箱は何ですか?」
ジェーンさんは、部屋の真ん中に不自然に置かれている大きな箱を見て首を傾げる。
「へへ、誕生日おめでと、ジェーン」
「それは私たちからの誕生日プレゼントだよ、開けてみて」
「ええ!? いいんですか? こんな大きなプレゼント……」
「うん。ほら、早く開けて開けて」
「ありがとうございます。では、早速開けてみますね」
ジェーンさんは戸惑いながらも箱のフタをゆっくりと開けていく。
ふふっ、ジェーンさんがどんな反応をするか楽しみね。
「ジェーン、誕生日おめでとう」
「わわっ! た、大将!?」
箱から出てきたリボンに身を包んだドミニカにビックリしたジェーンさんは思わずその場で尻もちをついた。
うん、中々面白いリアクションね。
「何だ、そんなに驚くことないじゃないか。前にお前も私に同じことをしてくれただろう?」
「そ、それはそうですけど……まさか箱の中に人が入ってるなんて思わないじゃないですか」
「4ヶ月前の私も同じことを思ったさ。さ、今日はジェーンが私を好きにしていいぞ」
と、聞いてるこっちが赤面するような台詞を平然と言い出すドミニカ。
何と言うか、さすがロマーニャ人の血が入ってるだけあるわね。
「た、大将! いきなり何言い出すですか!」
ティナのズボンと同じくらい顔を真っ赤にしながら、ジェーンさんは慌てふためく。
「どうした? 私がプレゼントじゃイヤだったか?」
「い、いえ……そんな事ないですけど……」
顔を一層真っ赤にさせて、しばらくの間黙りこむジェーンさん。
やがて何かを決意したような表情で立ちあがり、ドミニカの前でこう呟いた。
「本当に……好きにしていいんですね?」
その台詞を言い終わるか言い終わらないうちに、ジェーンさんはドミニカの唇にそっと自分の唇を寄せる。
「わぁ、ジェーンって意外と大胆だね」
「う、うん……」
私たちがそのままリベリオン夫婦の行く末を見守っていると、ジェーンさんが驚くべき行動に出た。
「うわぁ、すごく美味しそうなケーキですね」
「私とルチアナで作ったケーキだ、食べてくれ」
「はい、頂きます!」
ジェーンさんはドミニカがルチアナと共同(正確にはルチアナが1人で)作ったケーキの生クリームを
ドミニカの首に塗ると、生クリームごとその首をペロリと舐める。
あらら、もう完全に私たちの存在なんてお構いなしね。
「お、おいジェーン、そんなとこっ……んっ」
「えへへ、ケーキも大将も美味しいです。次は頬に塗りますね」
ジェーンさんはそれから数十分もの間、ドミニカの身体に生クリームを塗って舐めるという行為を繰り返し続けた。
何て言うか……2人とも末永くお幸せにね。
~Fin~