ヘルマの弟子入り


「少し遅くなりましたが…バルクホルン大尉!お誕生日、おめでとうございます!!!」
「…へ???」
「これ…私とクリスさんで選んだプレゼントです!」
「クッ、クリスとか??!!」
「はい…あとお手紙も貰ってます」
「お前…クリスと仲が良いのか…」
「はい!…まあクリスさんはロンドンに居るので、1~2か月に一度しか会えませんが;;」
「ありがとう!」

ギュッ...

最近、寮近くで住み着いてる野良猫が発情期でうるさくて眠れません!
…あ、第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のヘルマ・レンナルツであります!
これは、その…この間の、『特別編・ヘルマの軍規違反』直後の話であります………。

「本当にありがとう!」
「このプレゼントを渡したくて…ここに来ました」
「これからもクリスと…仲良くしてやってくれ」
「………はい!であります!」
「その笑顔!それでこそレンナルツだ!」
「ありがとうございます、バルクホルン大尉…私、ここに来て正解だったでありま………ひいっ!!??」
「…ん?どうした?レンナルツ」
「ああああああの…」

わっ、私!見てはいけないモノを見てしまったでありますっ!!!!

「ん?どうした?」

ドアが少し開いていていてですね…その隙間から光る2つの怪しげなモノが…っ!!

「あら、バレちゃったかしら?」
「なんだミーナか…」

その…隙間からミーナ中佐が見ていて…なんか背中がゾクッとしたんでありますよ!マジで!!

「ねえヘルマさん」
「はいぃぃっ??!!」
「…とりあえず、抱き合うのはいったんやめにしてもらえないかしら?」
「あ…」

気付けば、ずっとバババババルクホルン大尉と…その抱き合ってたであります;;

「今夜はここに泊っていくということで、大丈夫よね?」
「へ…??」
「ウルスラさんから聞いてるわ、あなたの事を。よろしく頼みますってね」

えぇぇぇっ??!!
そんなん無理です、ダメであります!!
だってここに泊まるイコール、ミーナ中佐に『いただかれちゃう』ってことですから!
…てかさっきからミーナ中佐、顔は笑ってるけど目は獲物を狙う目でありますよ??!!

「あ、あのぅ…」
「何かしら?」
「この辺にビジネスホテルとかないですかね…?」
「ないわ」
「じゃっ、じゃあ部隊の他の方々に迷惑掛けるとアレなんで野宿します!」
「迷惑なんかじゃないわ、泊まっていきなさい」
「そうだぞレンナルツ、お前は居ても全然迷惑なんかじゃないぞ!」

ううっ…バルクホルン大尉、そのお言葉と笑顔は反則でありますって!!


***


【数時間後】


「うううっ…(泣)」
「ねえヘルマさん…良かったわ。もう一回戦、どうかしら?」

掛け布団にくるまり、泣いてる私…であります。てか、なんで私とミーナ中佐は同室なんでありますかぁ??!!
…そして、やはりミーナ中佐に『いただかれちゃった』であります…。

「なに泣いてるのかしら?」
「ごっ、ご自身がなされてることがわからないのですか?!パワハラ…いや!れっきとしたセクハラですよ!!」
「あのね、ヘルマさん」

するとミーナ中佐はベッドから抜け、傍のテーブルに置いてあるガラス製のピッチャーを手に取り、グラスに水を注いだであります。

「私くらいの役職だと…こうゆう軽いことは揉み消すことが出来るのよ」
「非常に、そして淡々と最低なことを言いますね…;;」
「管理職となると色々とねえ…ストレスが溜まるのよ」
「わっ、私はミーナ中佐の人柱じゃありませんってば!!」
「人柱?…聞こえが悪いわね。あくまでもあなたの意志でベッドに入ってベッドで行為をした…って解釈だけど?」
「…絶対に偉くなったら、あなたをっ!!」
「何か言ったかしら?」
「いいえ!!」
「ふふふっ…さっ、も一回しましょう」
「…へ???」


***


「イタタタ…」

翌朝、腰がものすごく痛いであります;;
まあ…あの後4・5回撃墜されてしまいましらからねえ…;;;

バレないようベッドからそっと抜け出し、裏庭へ行く私。
するとそこには…

「あ!あの人…!」

ガリア復興の際、一時期『時の人』となっていたガリアのぺリーヌ・クロステルマン中尉ではありませんか!!
恐る恐る近づいて…、

「おっ…おはようございます」
「きゃっ!?」
「わっ!!??」

そっ、そんなに驚かなくても;;;
それに私までも驚いちゃったであります;;;

「なっ、何ですのあなたは!?」
「あ、第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のヘルマ・レンナルツであります!」
「前にも来た方ですわよね?」
「はい。失礼ですが、自由ガリア空軍のぺリーヌ・クロステルマン中尉でありますよね??」
「いかにも私がそうですが」
「わあ…!!有名人に会えるだなんて…!!」
「有名人?私が?」
「はい!」

少し頬を赤く染めるクロステルマン中尉…であります。
『ブループルミエ』と呼ばれるトップエースも、意外と恥ずかしがり屋さんなんでありますね~!

「リネット曹長とガリア復興で活躍してたそうですね?!我がカールスラントでも新聞の一面を飾ったことがありますよ!」
「それは本当ですの?!」
「ええ!ヤフーニュースでもトップニュースに!」
「そ、そうですの;;」
「あ、あとこの間あれにも出てませんでした?!『あの人は今!?』に!!」
「………」

あ…あれれぇ???

「なっ、何をなされてるんですか?こんな朝早い時間に」
「種を植えてるんですの」
「種?そういやここ…」

周りを見渡すと、軍事基地とは思えないほどの綺麗な花々!
昔、小さい頃に読んだ童話の世界…ような花畑がそこにあったであります。

「綺麗な花々でありますねえ…」
「そ、そうかしら?」
「それに…良い香りですねえ」
「ハーブも育ててるからですわ」
「お詳しいんですか?」
「まあ…ちょっと」
「スゴいであります!」

有名人の意外な一面も…ちょこっと見れたでありますね。

「コホン…これはレモングラス、あれはベルガモット、こっちがマジョラム」
「結構色々な種類のを栽培なされてるんでありますね!」
「まっ!貴族として当然の嗜みですわ!(ドヤ」

…え、ドヤ顔?!私の中の『ペリーヌ・クロステルマン』像のポイントが20点マイナスであります…;;

「あの…」
「何ですの?」
「単刀直入に聞きますが、クロステルマン中尉は坂本少佐がお好きなんでありますよね?」
「なっ!!何故それを…!?」
「公式設定ですから」
「何ですの?!それ」
「そんなことはどうでも良いんで、教えてください」
「あ、あれは憧れから来るものでありますわ!!」
「…ですよねえ」
「だから何ですの?」
「付き合いたい…って思わないんでありますか?」

すると、クロステルマン中尉は近くのベンチに座ったであります。

「そりゃあ…もしお付き合いが出来るのなら、したいですわ」
「ええ」
「けど…今の関係が、一番良いかなって最近思い始めてて…」
「………」
「少佐といつか結ばれる!と思ってるから、日々の生活が楽しいのではないのかしら…って思いますわ」
「べっ、勉強になるであります!!!!」
「かかか顔が近いっ!!」
「ス、スミマセン;;そうでありますよね…前から欲しかった物がいざ手に入ると…楽しさが半減することと一緒でありますよね?」
「まあ…そんなところですわね」

正直、昨日あのままずっとバルクホルン大尉に抱きしめられてたら…どんなに夢見心地だったのでしょう…
けど…『憧れ』は『憧れ』のままにしておくから、その分パワーになって跳ね返って来るものだと思うであります!

「クロステルマン中尉!…いや、ペリーヌ姉やん!!!!」
「ペッ、ペリーヌ姉やんですって??!!」
「あっしを…今日から弟子入りさせてください!!!!」
「ちょちょちょ…どうゆうことかしら???」
「まずは性格をツンツンにした方が良いのでありますね??!!」


***


そして帰る時間がやって来たであります。
ハルトマン中尉の運転で、バルクホルン大尉と私の3人で空港まで送ってもらい、車中にて…

「バルクホルン大尉」
「レンナルツ、どうした?」
「あの…えと、昨日は色々迷惑かけて申し訳ございません!!」
「全然迷惑だなんて思っていないぞ、心配するな」
「そのうちトゥルーデ、レンは『いもうと』だって言うかもねー」

なんか良い感じだったのに、ハルトマン中尉が横槍を入れてきたであります!
全く、この人はもう!!

「エーリカ!」
「へへーんだ」
「ゴホン…けど、レンは…我々501部隊の家族…ではないが…親戚だな」
「親戚…でありますか?」
「ああ。バカンスに遊びにくるような感覚で、疲れたら私のところに来れば良い」
「あれぇ、ここは戦場だよー?遊びに来るところはないよー?」
「えぇい!さっきから茶々を入れるなハルトマン!!!!」
「はは…あははは」
「あ、レン!ウルスラによろしくね」
「はい!であります!」

そう言って、私はウルスラ・ハルトマン中尉の『粋な計らい』によって生み出された休暇…いや、謹慎?
まあどっちでも良いであります!

そして、本国へ戻ってから真っ先にハルトマン中尉の研究室へ。

「この度は申し訳ございませんした!以後、あのようなことがないよう心がけますので明日から心機一転頑張ります!」
「…そう」
「あとこれは…501部隊の宮藤軍曹からお土産の里芋の煮っころがしです…あ、タッパーの蓋が緩くて汁がこぼれててベトベトですが;;」
「…姉さまは、元気だった?」
「はい!ぜひ会いたいと仰ってました!」
「そう…」

普段はあまり見せることのない笑顔を、見せたであります。
良かった…これで以前の関係に戻ったであります!

上機嫌で部屋に戻ると、

「ん…んっ?」

ドアに何か手紙が挟まってるではありませんか!!

「何でしょう…?」

恐る恐る手紙を開けると、そこには1枚の写真とメモが。

「…えっ!?」

写真とは………ベッドの中でいつの間にか中佐に撮られた…その、その…そのぅ…いわゆる『ニャンニャン写真』であります;;;

「な…何でありますか?!これっ!!」

そしてメモには、
『あなたは私からは逃げられないわ。 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ』
と。

「………優秀な弁護士を探さないと;;」

ヘルマ・レンナルツ13歳、一難去ってまた一難…まだまだ苦労は絶えません…トホホ。

【おわれ】



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