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ミーティングルームでの、午後のひととき。
リーネと芳佳が準備した美味しい紅茶とお菓子を前に、皆のたわいもないお喋りが始まる。
「ん? 何読んでるの? それ何の雑誌?」
「フットボール」
「?」
「足で球を蹴るスポーツの事だよ」
「扶桑には貴族がやる『蹴鞠』ってのがありまして……」
「ゴメンそれはよく分からない」
「その足で蹴る球技、サッカーとは言わないのか」
「国によって言い方違うんじゃね? リベリオンで『フットボール』って言うとサッカーとはまた他の競技に……」
「面白そうだね。501(ウチ)はちょうど十一人居るから、今度サッカーしない?」
「しても良いけど……誰と」
「例えば、隣の504とか」
「乱闘になりやしないか心配だ」
「何でそこまで心配するのさ」
「ウチは、やっぱりエースと言う事でトゥルーデと私のツートップ?」
「いや、むしろ堅物はゴールキーパーだろう」
「何で私がキーパーなんだ」
「鉄壁というか、いかにも堅物にぴったりじゃないか」
「何だとリベリアン」
「まあまあ。じゃあ、フォワードは少佐で?」
「私か? 球技は良くわからんのだが大丈夫なのか。シールドは張れないが」
「シールド使うスポーツじゃないから大丈夫よ、美緒」
「そもそもシールドが必要なスポーツなんて有るのかヨ?」
「となると、ミッドフィルダーかディフェンダー辺りにはミーナ中佐が良いな。チームの司令塔って感じでさ」
「ついでに固有魔法使えば位置把握も完璧だね、ミーナ」
「ええっ? 流石にスポーツで固有魔法使うのはどうかと思うわ……」
「エイラ、私、人と張り合うのは……」
「大丈夫、サーニャは私が守るゾ」
「いや、ゴールも守ってくれよ」
「じゃあ中盤で二人でお互いを守るヨ」
「何か違うぞそれ」
「芳佳ちゃん、私達は?」
「どうしよう、リーネちゃん」
「宮藤とリーネか。二人は……そうだな、ペリーヌと三人で、中盤でプレス掛ければ良いんじゃないか?」
「プレス? 何ですかそれ?」
「相手を威圧するんだ」
「威圧……」
「芳佳ちゃん、何で私の胸見るの!?」
「こ、この豆狸は……ッ!」
「ニヒー 二人共胸ぺたんこだしー、プレスプレスー」
「ルッキーニさんに言われたくはありませんわ!」
「ルッキーニは何処がいいかな……てかよく考えたら、501の大半がフォワード向きな気がしてきた」
「むしろ守備的な奴の方が少なくないか?」
「そうかな?」
「えっ」
「えっ」
「うーむ。球技の事は良く分からんのだが……とりあえず斬れば良いのか?」
「斬る!? 何を!?」
「あのー少佐、この球技、扶桑刀は使いませんから」
「てか刀使う球技って有るのか」
「ふむ……やっぱりよく分からんな」
「まあ、トゥルーデはキーパー決定ね」
「だから何で私はそこ限定なんだ」
「だってキーパーって……何でもない」
「はっきり言わんか! 気になるだろう」
「シャーリーもトゥルーデはキーパー向きだって思わない?」
「あー……。うん。分かる。何かそんな感じ」
「どんな感じなんだ?」
「えっと、ほら。こう、妹達を包み込む愛情、みたいな?」
「ちょっと違わない?」
「意味が分からない! てかサッカーと妹は関係無いだろう」
「攻め込んでくる妹達を受けとめる、みたいな」
「ふむ。私を姉と慕うなら、喜んで受け容れるぞ」
「いやだからそこは守りなって」
「結局何の話なんダヨー」
紅茶とお菓子の甘い香りが漂う中、止まることなくかしましい会話は続く。
end