formation "501"
今日も美味しいお菓子と紅茶を片手に、のんべんだらりと会話が続く。
「この前のサッカーの話だけど」
「うんうん」
「何か有ったのか?」
「504の隊長さんに話付けてきた」
「えっマジで?」
「本当に試合やるのカヨ?」
「なんかよく分からないけど、向こうはみんなノリノリだったよ」
「お気楽ロマーニャン達め……」
「あたしらも似た様なもんだけどね」
「JFW対抗戦って事で、501はサッカーでも一番を目指すよ!」
「“でも”って何だ? そもそも、何かで一番とか目指していたのか私達は……」
「トゥルーデ細かい事考えないの」
「しかし、よく504の隊長が許可してくれたな」
「んー、なんかね。『面白そうなのは大好物』とか言ってたよ」
「……何か危険な香りがする」
「ミーナは良いよね? 親善試合」
「し、親善!? まあ……、そうね。向こうが良いって言うなら考えるけど、どう思う美緒?」
「とりあえず、何をするんだミーナ?」
「えっ!?」
「そこからカヨ!」
「剣術なら負けないつもりだが」
「だから少佐、刀から離れろッテ! サッカーダヨサッカー!」
「うーむ、何をすればいいんだ」
「手とか腕、肘を使わずに足だけ使って相手からボールを奪って、追いすがる相手をかわして、相手のゴールにボールを蹴り入れるだけの簡単な……」
「難しそうだな」
「まあ、確かに難しいんだけどね」
「少佐は……そうだな、攻撃的ミッドフィールダーなんかどうだろう」
「何だそれは」
「魔眼を使って相手の弱点を探して、フォワードに伝えれば良いんですよ。あわよくばスキをみてゴールを……」
「なるほど、私にも出来る事があるんだな」
「……スポーツで固有魔法使うのはどうかと思うんだけど」
「そんな中佐はディフェンダーかミッドフィールダーで、固有魔法使ってフィールド全員の位置把握をしてチーム全員に指示を出して下さい」
「私も固有魔法使わないといけないの?」
「中佐の三次元空間把握能力はとても有効だと思うんですけどね」
「スポーツで固有魔法って、なんかズルしてるみたいで……」
「良いんですよバレなきゃ」
「そう言うものなの?」
「ルッキーニはその俊足と身軽さを活かして、サイドから一気に攻め込むのも有りだな」
「ニャハーおもしろそう」
「確かに、ルッキーニは身体軽いし動きも速いから、キーパー以外何処でもいけそうだな」
「イエー あったし~、万能選手って事?」
「器用貧乏とも言うんダゾ?」
「ぶー。エイラひどい!」
「しかし、考えてみると501(ウチ)はフォワード向きなの多いな」
「そうだな」
「例えば、エイラも固有魔法使えば無敵じゃね?」
「フォワードにもディフェンダーにもゴールキーパーにも向いているな」
「私は痛いの嫌だから、ボール来たら避けるヨ」
「おい!」
「避けたらダメだろ避けちゃ!」
「……前の“特訓”を思い出して、色々と頭が痛くなってきましたわ」
「落ち着けペリーヌ」
「じゃあキーパーはやっぱりバルクホルンで」
「だからどうして私なんだ」
「あの……私は何か出来ますか?」
「サーニャか。魔導針で相手の位置補足とか」
「ディフェンダー向きだな。中佐と同じポジションでもいけそうだな」
「だからサーニャは私が守るって言ってるダロー!」
「だからサッカーで何でサーニャを守る事に固執するんだ。スポーツだぞ?」
「ロマーニャ人は油断ならないからナ。サーニャに何かしたら絶対許さないゾ」
「落ち着けエイラ」
「いや待てよバルクホルン。ここはエイラの特性を活かして、むしろサーニャをキーパーに……」
「なるほど、そうすればエイラは絶対に相手から……」
「コラー! サーニャをエサに私を動かすナー!」
「ところでシャーリー、お前は何処のポジションなんだ」
「あたし? サイド辺りのミッドフィルダーでいいんじゃね? ボール貰ったら一気に加速して距離詰めてゴール!」
「加速か……なんか卑怯だな」
「卑怯って言うな!」
「私はどうするのトゥルーデ?」
「ハルトマンはフォワードだろう。純粋に身体能力高いし、何よりウチのエースだからな」
「シュトルムー、とか?」
「それを相手にやったら多分一発退場だと思う」
「ペリーヌもそうだな。相手に電撃とかかましたら、レッドカードに……」
「ルッキーニも多重シールドとか使うなよ?」
「エーなんでー? 相手に直接身体触れないからいいじゃん」
「そう言う問題じゃない」
「リーネは宮藤、ペリーヌと一緒にディフェンダーが良いな。三人のチームワークでオフサイドトラップ仕掛けるのも良いな」
「それは構いませんけど……鈍臭い宮藤さんが私達について来られるか心配ですわ。しくじったらゴールがら空きですし」
「酷いペリーヌさん! なら私とリーネちゃんで合体攻撃を……」
「何をするつもりだ宮藤」
「そうだなー。特にリーネの狙撃能力で、フォワードに的確なパスを」
「それ『狙撃』って言うんですか? 私、ボール蹴る事そんなに無いから……」
「大丈夫、魔法魔法」
「はあ」
「で、宮藤は負傷した仲間を治療すると」
「あの……私、フィールドに居なくても良いんじゃないですか? ベンチで待機でも」
「いや、サッカーは十一人でやるものだから」
「そんな輝いた顔で言われても……」
「ところで、チームの監督は誰?」
「えっ」
「えっ」
リーネがおかわりの紅茶を淹れ、皆に振る舞う。まったりとした甘い香りの中、お喋りは途切れる事無く続く。
end