Ihr wahrer Charakter


砂漠の中に設営されたテント。
そこに、数人の司令官やウィッチが定例の会議をしている。

「ネウロイは昨日に攻めてきたので、今日出る確率は低いわ」

会議を仕切っているのは『ケイ』こと加東圭子。

「なので、各自訓練等をしておくこと。以上、解散!」

会議を終えると、次々とテントの中から出て行く...

「…さてと、夕飯の下ごしらえを」

最後の方に、立つ人物が一人。彼女の名はライーサ・ペットゲン。
テーブルの上に置いていたメモ帳を忘れないように取り、調理場のあるテントへ向かおうと席を立つ…が、

「あ、ライーサさん!忘れ物ですよ!」

ライーサが立った際に落としてしまったメモ帳に挟まれてたと思われる一枚の写真を取る、傍にいた稲垣。

「あれ…行っちゃった」

既に彼女の姿はなく、ふと手にしている写真を見てみる。

―――誰のサインだろう…?

その写真の裏には誰かのサインがあり、表面を見てみると…

「…えっ?」







「ライーサさん!」
「あ、マミ。どうしたの?」
「あの…これ」
「へっ…?」

調理場のあるテントにて、稲垣は先ほどライーサが落とした写真を渡す

「…っ!!」
「あの…何故?」
「だっ、誰にも言わないで…ね」
「は…はあ…」
「………」
「…お好きなんですか?」
「うん!」

若干、鼻息を荒くして答えるライーサ。
寡黙な人…という印象を持っていた稲垣は、普段の彼女からは感じられない姿にただただ驚く…

「もしかして…マミも!?」
「あ…えと、上官としては…ですけど」
「そ…そうなんだ」


***

所変わり、マルセイユのテント。

「なあケイ」

いつもとは違い、真剣な表情をするマルセイユ。

「ん?何よ?…と言うか、あなたも仕事しなさい」
「私は事務仕事は苦手なんだ」

何故かマルセイユのテント内で事務仕事しているケイ

「そもそも、なんでここで仕事をしているんだ?」
「このテントが一番涼しいんだもの」
「だからって…」
「…で、何?何か呼ばなかった」
「あ、ああ。最近…なんかその…気持ち悪いんだ」
「飲み過ぎよ」
「違う!そうゆう気持ち悪さじゃなくてだな!」
「じゃあ何よ?」
「…なんかその…後を付けられてる感じがするんだ」

すると何事も無かったかのように仕事に戻るケイ

「おい!」
「まさかその歳で幽霊が怖いとか、どんだけよ」
「違うっ!」
「はいはい、今夜一緒に寝てあげるわ」
「子供扱いすんな!」
「じゃあ何?!私、今忙しいんだけど!!」
「…誰かにストーキングされてるっぽいんだ」
「アナタの熱狂的ファンなんじゃないのかしら?」
「そうゆうのはマティルダが排除してくれてる」
「…まあもしそれが本当なら、外部からの犯行は無理ね」

事務仕事をしていた手を一旦止め、ケイは肩を回し始める...

「肩が凝るわねえ…で、こんな僻地まで追っかけてくるファンって今まで居たかしら?」
「…あ、ケイが来る前に1人だけ居た!私の熱狂的なファンでな…マンションの権利書を持って来たファンがな」
「じゃあソイツじゃないの?」
「いや、権利書だけ貰ってカールスラントに強制送還して…本国で裁判したからもう来ないな」
「逆恨みの犯行じゃないの?」
「うーん…」
「じゃあソイツじゃ、ないんじゃない」
「…真面目に聞いてくれ、ケイ!」
「あー…アホくさ」

突然ケイは立ち上がり、机の上に広げてあった書類をまとめ始める

「自称『アフリカの星』が…なんて弱気なことを言ってるのよ!それより戦闘で怖い経験を何回かしてきたでしょ?!」
「だから!…その怖さとはまた違った怖さなんだって!!例えば…シャワーを覗かれてる気がしたりとかな!」
「じゃあ何って言うの?」
「私が考えるに…同性の犯行だな」
「そう。わかった」

そう言い残すと、テントから出て行った。

「…話を聞け、バカ!」


***


所戻って、調理場のあるテント。

「…アルバム、見たい?」
「へっ…??いや…結構です;;;」
「見たい…よね?!」

もの凄い勢いで稲垣に迫るライーサ

「わっ、わかりました!!みっ、見たいです!!見たいし、痛いです;;腕を掴まないでください!!;;」

すると、どこから取り出したのか『ライーサのマル秘アルバム』を取り出す...

「いっ、一体どこから…?」
「これは私が1年間毎日撮り続けた記録なんだけど…」
「えと………え、ウソッ!?」
「この写真撮るの…大変だったなあ」
「ちょちょちょ!!」
「え、焼き増しして欲しいの?フィルム残ってたかなあ…」
「ちっ、違います!」


***

そして、その日の深夜。

「…ん?」

たまたま用があり、テントとテントの往き来をしていたケイはマルセイユのテント付近で不審な影を見つける

「もっ、もしかして…」

『例えば…シャワーを覗かれてる気がしたりとかな!』
と、昼にマルセイユが言っていたことを思い出す。

「ま…まさか!!」












バッ!!

テントに忍び寄る不審な人物の腕を掴む

「アナタ!!そこで何やってるの??!!」
「っ!!」
「…ラッ、ライーサ??!!」
「こっ…こんばんは~」
「…こんばんは」

そこに居たのは意外過ぎる人物だったので、思わず変なリアクションを取ってしまうケイであった。

「何してるの?!…って、それーっ!!」
「シ~ッ!!声が大きいですって;;」
「あ、ごめん;;…じゃなくて!それ私のカメラじゃない!」

そして、ライーサの手には何故かケイのカメラがあった...

「あの…これは…今から、バードウオッチングにですねぇ;;」
「私のライカで?」
「あの…これは…この間ヨドバシのポイントを使って………ごめんなさい!!!!」
「………」

ケイにより強制的に、テントへ連れて行かれるライーサ。

「…話を聞こうか」
「別に!悪気はないんです!!」
「どう見てもあるわよ!自覚ないの?!」
「ただ…ティナの天使のような寝顔が撮りたくて…エヘヘヘ…すみません、ヨダレが」
「うわああ…」

若干、引くケイ。

「あの…騒がしいですが、どうしたんですか?」

よほど騒いでいたのか、心配になってやって来た稲垣。

「マミ!ライーサがね、」
「あー…」
「何か知ってるの?!」
「あれは…私も良くないと思います」
「え?え?」
「ライーサさん…昼に、私にマル秘アルバムを見せて来たんです」
「アルバム?」
「ええ…一年間に渡って撮り続けていたマルセイユさんの写真のです」
「今度本国の出版社へこの写真を持ち込んで、写真集かカレンダーを作ってもらう予定です」
「何勝手に他人の写真集作ろうとしてるのよ!」
「大丈夫です、出版社に知り合いが居ますので」
「そうゆう問題じゃない!」

ケイは頭を抱えながら、席に座る。

「はああ…」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよ!まさか身内の犯行だったとは…」
「…あ、あのぅ」

すると、今まで黙っていた稲垣が手を挙げる...

「どうしたのよ?」
「ライーサさん…マルセイユさんがお好きなんですよね?」
「はい」
「あのぅ…なんで…?」
「だってカッコ良いじゃありませんかぁ!!!!」
「………」
「………」

いつもと180度キャラが違うライーサに困惑する、2人である…。

「ちなみに、ティナの何でも知ってますよ?!ティナの好きな飲み物は牛乳、好きな花はパンジー、好きな映画は『カサブランカ』、好きな漫画は『聖闘士星矢』、好きな芸能人は中井貴一、好きなお笑い芸人はオール阪神」
「もう良いっ!!!!」
「うっ…うわああ…」
「…まだまだ知ってますよ?ティナが最近気になる物は『ポケットドルツ』とか」
「ライーサさんって、マルセイユさんのマネージャーさんですか??」
「いや、れっきとしたストーカーね…ねえライーサ」

少々呆れ顔で質問するケイ

「そんなん詳しいなら、付き合っちゃえば良いじゃない」
「…それはちょっと」
「へ???」
「何でですか?!」
「確かにティナは好きです、けど…」
「「けど?」」
「いつまでも…心の奥にしまっておきたいんです」
「…はあ?」
「だって永遠の片想いって最高じゃないですか?」
「最高なの?マミ」
「私に聞かないでください;;;」
「そもそも…私とティナの出会いは本国のJG27に居た時です…」
「ちょっと待ってライーサ、その話って長い?」
「ええ、長いです」
「…まあ良いわ、続けて」

そして、延々と2時間に渡って
ライーサがどれだけマルセイユを慕っているかを聞かされたケイ。

「Zzz...」
「…だったんです。そうした時に、ティナが…ケイさん!ケイさん!」
「…あ」
「『あ』じゃないです!!聞いてました?!」
「うん、聞いてた聞いてた…Zzz」
「ちょっと寝ないでください!!」
「ごめん…続けて」
「もう…それで、私とティナで『なわとび選手権』に出ましてですね…」

ちなみに稲垣は既にリタイアし、地面に横になって寝ている...

そして朝陽が差し込む時間となった。

「…というワケで、私はティナが好きなんです!あ、好きと言っても『LOVE』じゃなくて『LIKE』なんですけどね」
「………おはよ」
「…おはようございます」
「で、終わったの?」
「ええ、私とティナにおける歴史。カールスラント編」
「え?!まだあるの?!」
「はい、アフリカ編もありますが…それが何か?」
「うわあ…」
「さあ、朝マックして訓練に備えましょう!」
「ねえライーサ」

寝ぼけ眼で、話しかけるケイ。

「あなたはマルセイユを想っている」
「???」
「そして、マルセイユのパートナーであり親友である」
「…昨夜、それを話したじゃないですか」
「それをね…世間は『LOVE』に分類されるものよ?」
「…へ???」
「断言する、あなたはねえ!…マルセイユのことが好きなのよ!愛してるのよ!」
「まさかそんな………え?」
「さあ行くのよ!ライーサ・ペットゲン!マルセイユのところへ!」
「あの、仰ってることの意味が…?」
「早く行きなさいってば!!!!」
「はっ、はい!!!!」

ケイに圧倒されたのか、ライーサは走ってテントの外へ出て行った。

「…あ、おはようございます」
「あ、マミ。おはよう」
「今のやり取りって…?」
「…もう腹立って、デタラメ言ったわ」
「えぇぇ…」
「したら、今…」
「あ~…」
「………」
「………朝ごはん、食べに行きましょうか」
「そうね」



後日、マルセイユにベタベタくっついているライーサの姿を目撃する隊員が続出。
見る者は皆、驚いたという。

それもそうと、勤務中は『寡黙』『真面目』で通っているライーサ。
しかし勤務が終わるとスイッチが入ったかのように、ベタベタし…あげくの果てには甘い声を出すのだ。


***


「なあケイ…」

神妙な顔つきでケイに相談するマルセイユ...

「ん?どうしたの?」
「最近のライーサ…変じゃないか?」
「変って…どの辺がよ?」
「人が変わったと言うか、なんと言うかその…」
「…気のせいよ」
「確かにアイツは本国時代からの仲間だ、戦友だ。しかし、それ以上の関係ではないんだ」
「そう」
「でも最近やけに私に話かけてくるようになってな…」
「良いことじゃないの」
「…いや違うんだ!!怖いんだケイ!助けてくれ、アイツはたぶん私に変な水を段ボールごと買わせようとしてるんだ!」
「………」
「『ねずみ講』に引っ掛かけようとしてるんだ、アイツは!それか変な宗教か!」
「………あなたってば、どれだけ仲間を信じてないのよ…」

ライーサの意外な一面と、
マルセイユは意外と小心者だということがわかった、出来事であった…。



【おわれ】


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