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ねえトゥルーデ、知ってる? 私、魔法少女なんだよ?
……前にもそんな話聞いたって? またまた~。
とりあえず聞いてよ。暇なんでしょ、トゥルーデ?
いちいち小言とか理由言わないと私の側に座らないとことか、いつもと一緒だね。
ま、良いけど。もっと側に来てよ。……うん、イイ感じ。
え? 勿体ぶらずに話せって? 慌てないで。ちょっと良いムードになったら話してあげる。
分かるよね、トゥルーデ?
顔真っ赤だよトゥルーデ。そういうとこ好きだよ。ふふ。
じゃあ話すね。私、魔法少女なんだ。
……繰り返すなって? そう言えばこの前この事、ちょっと話し掛けて途中のままだったっけ。
ふーん。トゥルーデ、無関心みたいで意外としっかり覚えてるんだよね。
そういうとこ嫌いじゃないけど。にしし。
私にはね、固有魔法の他にもうひとつ、魔法を持ってるんだ。
知ってた?
知らない? まあそうだよね。だって話すの初めてだもん。トゥルーデが一番最初。
どんな魔法かって? まあ慌てないで。
そうだね。
何て説明したら良いのかな。
例えば、エイラとサーにゃんがケンカしてたとするじゃん?
そこには、決まって、ある色のカケラが転がってるんだよ。紅に近いかな。
ネウロイのコアじゃないってば。そんな物騒なものじゃないし私より先に少佐に見つかっちゃうよ。
で、私が、そっと忍び寄って、カケラを見つけて、持ち去る。
そうするとエイラとサーにゃんは「ゴメンネ」抱き合って仲直り。って訳。
例えば、ペリーヌとリーネがお茶の淹れ方、選び方でもめたりしてるよね?
テーブルの隅、見てごらん。同じ色のカケラが有るから。
私がさりげなくテーブルからそのカケラを取ると、ペリーヌのツンツン口調が収まってリーネも微笑む。
例えば、ミーナと少佐が些細な事で口を利かなくなったとか、あるよね?
部屋でひとり黄昏れてるミーナの横には、今にも割れそうなカケラが有ってね。
私がそっと持ち去ると、少佐が入ってきて、……あとは分かるよね?
ミーナだし。少佐はあんな感じだし。
どう? こう言うの。私のもうひとつのチカラ。
え、仲直りさせるだけかって? 分かってないなあ、トゥルーデ。
私が魔法少女だから、出来るんだよ? せくしーぎゃるだし、私。
どうしたのトゥルーデ? そのカケラはどうやって処理するのかって?
溜め込んで、私がどうにかなるんじゃないかって?
心配性だね、トゥルーデ。分かってるよ、トゥルーデ。
そうやっていつも私の事気にしてくれるの、嬉しい。
カケラはね、ぎゅーっとまとめてひとつにして、私がゴクリって呑み込む。
そうすれば綺麗になくなるよ。ちょっと胃がボンッてなって舌がひりっとするけど、結構美味しいんだ。ハッカみたいで。
大丈夫、慌てないでトゥルーデ、本当に心配性だね。私は大丈夫だって。
どうしてそんな事言えるのかって? 「負の感情」を食べて平気な訳有るか、って?
トゥルーデ、気付いてない?
今の話、ぜんぶ嘘。
もとはね、絵本で見た妖精の話なんだ。何でも……
ちょ、ちょっとトゥルーデ。どうしたの急に怒って……
うん。ゴメンね、心配させて。
でもそうやって、いつも怒ってもすぐ抱きしめて、私の身を案じてくれる。嬉しいよ。
やっぱり、トゥルーデは笑顔の方が良いよね。私も嬉しくなる。そう。笑って。
トゥルーデの身体、温かい。たまに熱く熱く火照って、私も着火しそうだよ。
そうだ、この話、皆にもしてみる?
どんな顔するか、見てみたいと思わない?
あ、トゥルーデは嘘が付けないからタチだから、難しいかな?
でも、やってみる? 一緒に。
end