Belastung


「…ではみんな、良い…?」

とても風の強い深夜…基地の窓はガタガタと音を立てている。

そんな中、501部隊の皆は基地の談話スペースに集まっていた…。
一番前にミーナが皆に声をかける。次に、

「覚悟して聞くようにな」
坂本が気合を入れる。

「リーネちゃん…」
「芳佳ちゃん…ドキドキが止まらないの」
「私も…」

「シャーリー…この空気、やだよお」
「がーまんだ、ルッキーニ」
「シャーリーも怖いの?」
「ああ、ものすごく怖いさ」

「サーニャ…怖いノカ?」
「エイラ、私…もう…」
「大丈夫だ、サーニャ…大尉は…きっとやってくれるサ」

「坂本少佐…」
「大丈夫、安心しろペリーヌ。バルクホルンなら…成し遂げてくれるに違いない!」
「そ、そうですわよね!大尉がヘマだなんて…!!」

談話室は、とても緊張した空気が流れる………。

「フラウ」
「………」
「フラウ?」
「…ミーナ、私…心配だよ…だってトゥルーデが…」
「…っ!!こんな、隊長の私が言うのもなんだけど…私も心配だわ」

ミーナは、隣で小刻みに震えていたエーリカを優しく抱きしめる...

「でも…仕方ないわ、あの娘が決めたことだもの…」
「でっ、でも…!!他のメンバーでも!!」
「トゥルーデが、断固として自分がやるって言ってたんだもの…私だって!代われるものだったら、代わってあげたかったわよ!!」
「ミーナ!落ち着け!」

感情的になったミーナを、坂本が止めた

「私だって…心配してるんだ」
「美緒も?」
「ああ…」

彼女が珍しく自信無さげな表情をし、気付いたら数分もの間沈黙の空気が流れる………。







「トゥルーデ…」
エーリカがボソッと名を呼ぶ。

「ねえトゥルーデ…なんで…無茶するの…?」
「フラウ、さっきも言った通りトゥルーデが決めた事なんだから」
「神様!お願い、何も…トラブルが起こらないようにしてください!」

そこにいた全員は口には出さないものの、エーリカと想いは一緒だった…。

そして、運命の時間がやって来た。

「おーい、そろそろ良いか?」
シャーリーが無理やり元気を出し、一番前に出る。
すると布を被った何やらを引き出してくるのであった

「ええ、お願いしますシャーリーさん」
「んじゃ、ほいっと」

布の中から出てきたのは…!?


***


ピッピッピッポーン♪

「こんばんは、ロマーニャ中央放送がお送りします『オールナイトロマーニャ』!深夜の水先案内人ことDJは私、フェデリカ・N・ドッリオが皆さまを眠れない夜に放送しちゃいまーす♪今夜のゲストは…現在ロマーニャの空を共に守ってくれるこの人!」
「………」
「…あれ?ゴホン、第501統合戦闘航空団のゲルトルート・バルクホルン大尉でーす」
「こっ、こんばんは!」
「はい、具体的に第501統合戦闘航空団はどのような任務に就いてるのーっ?」
「あ…はい!えーと…ネウロイをやっつけてます」
「…バルクホルン大尉は、どんな役割をしてるのかなー?」
「あ…はい!銃で撃ってます」
「…そうなんだあ、じゃあ第501統合戦闘航空団で好きな時間はどう過ごしてるのかなー?」
「あ…はい!クリスに手紙を書いてます!」
「…へえ!そもそも、どうして第501統合戦闘航空団が結成されたのー?」
「あ…はい!それはですね…」
「ごめんなさーい、時間来ちゃいましたー!今夜のゲストは第501統合戦闘航空団からゲルトルート・バルクホルン大尉でしたー」


***


後日この放送を、ミーナの居る執務室にて録音したものを再度聞くバルクホルン・エーリカ・ミーナの3人。

「「………」」
「…ふう、70点の出来だな」
「はあ?!どこが70点なのトゥルーデ!!0点だよ、0点!」
「そうねえ…まず、緊張し過ぎ」
「やっぱり生放送だと、私の実力が発揮できないな」
「そんなレベルじゃないよトゥルーデ!」

ソファーで寝そべっていたエーリカだが、ここぞとばかりと立ち上がる。

「これは放送事故だよ!?」
「何だと?!」
「戦闘航空団がネウロイをやっつけるのだなんて、大概はそうだよ!当たり前だよ!」
「いやあ…そのちょっとお茶目な所が、全世界の『いもうと』達の母性本能をくすぐるのではないかなと思ってな」
「はああ…」

ミーナは頭を抱えながら、

「ねえトゥルーデ、なんで…私やフラウ、もっと言えばシャーリーさんと交代しなかったの?」
「良いかミーナ、ラジオと言うのは聞いてる皆に戦局の情報やはたまたや安心させるための物だ。だからシャーリーのように、あんな浮いたヤツはダメだ!ここで冷静沈着でクールな現実主義者な私が…」
「何処が冷静沈着でクールなの!?全ての質問に『あ…はい!』って言葉が詰まってたじゃない!」
「いや、いざマイクの前に座るとだな…その…」
「はあ…だったらラジオ経験者のエイラさんとサーニャさんに頼めば良かった…」
「………スマン」
「最初っから謝れば良かったじゃん…」
「…スマン、2人とも…」
「皆に謝りなさいよ」

その後、『広報』の仕事を一切引き受けなかったバルクホルンであった…。


【おわれ】


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