ヘルマの水泳訓練
「水練に来たのに、ずっとひなたぼっこしてるじゃないですか」
どうも、最近暑いですね!ネットの通販でどこ製かわからないけど、扇風機を買いました!
第131先行実験隊「ハルプ」第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツであります!
お給料の積立金から慰安旅こ…ゲフンゲフン、訓練の一環としてカールスラントが誇るリゾート地・ワルネミュンデに来てるであります!
…が!皆さん、趣旨がわかっていない模様;;
だってこれは訓練の一つなんですよ?!なのに…なのに全員ダラけ過ぎです!!どこの訓練にオイルを塗ったり、ビーチパラソルの下でスポーツ新聞読む輩が居るでありますか!
これは断固、上官に抗議です!
「フフ、そういう生意気は浮き輪なしで泳げるようになってから言いたまえ曹長」
「ムキ~!こっ、これはですね…浮き輪じゃありません!!!!」
「………は?」
「これは………」
「これは?」
「………すっ、水泳補助道具です!」
「…わかった、訓練して来い」
「…はい…であります…」
すると…急に、
「ヒャッ!!??」
誰かに脇腹を触られたであります!誰です?!こんなに堂々と猥褻行為を働く輩は!?
「ちょっと!!」
すぐさま後ろを向くと…
「ん?」
そこにはたぶん、扶桑の人間が…は?!扶桑?!
だってこれはカールスラント軍の慰安旅行…じゃない、水練じゃあ?!
「ちょっとアナタ!何をするんです、と言うか誰ですか?!」
「ああ、忘れてたな」
さっきまで寝ながらスポーツ新聞を読んでいた上官が起き上がって、
「紹介する。連合軍第502統合戦闘航空団の下原定子少尉だ」
「はじめまして~」
なんですかぁ…このフワフワした雰囲気は!!
「ごめんなさいね~、可愛い物をみるとつい触ったり抱きしめたりしちゃうもので」
「うわあ…それ、私で良かったぁ;;街中で他の人にやったら明らかに不審者ですよ;;;」
「申し遅れました、扶桑の下原定子です」
「こ、こちらこそよろしくお願いします…あ!第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツです」
「いやあ…つるぺた幼女最高だわ~!」
「っるさいですよ!余計な御世話です!」
何なんですか?!この人はぁ!!??
…ん?あそこにいるのはハインリーケ大尉?しかもその周りには…前屈みしている殿方がちらほらと…;;
「せっかく海に来て泳がんのか?全員前屈みでおかしな奴らじゃの」
「大尉…すいません、僕シャワー浴びてきます!」
「俺はトイレ行ってきます!」
「???」
あぁ…大尉、自らのミラクルボディの魅力がわからないんですねえ…;;;
で、でも…何を食べたらあんな大きく…(ゴクリ
…ん?さっきまで隣にいた下原少尉…あれ???
「んん~…カールスラント最高ぉ」
えぇぇ!!??
なななななんで、なんでさっきまで私の横にいた下原少尉が大尉に抱きついてるんですかぁ?!
「レンナルツ!おい、レンナルツ!見てないで、コイツをどうにかしろ!」
「すいません…ってなんで、私が謝ってるんだろ;;」
「なんだ、お前は…ってなんだ、下原か」
「え?!ご存知なんですか?!」
「お互いナイトウィッチだからな」
「はい」
「へえぇ…」
「ヘルマちゃんヘルマちゃん」
「ヘルマちゃん?」
「いやあ…相変わらずプリンちゃんは良い体してるねぇ!」
「下原、妾をそんな名で呼ぶでない!」
「あ、あのう…」
こ、個人的に…プリンちゃん…じゃない、ハインリーケ大尉の体に興味が…(ゴクリ
えぇい、こればかりは下原さんに直接聞いちゃうであります!!そっと近付き…、
「何?ヘルマちゃん」
「どんな感じなんですか?大尉の体つきって」
「ん~…ヘルマちゃんとはまた違うぷにぷに感だね~」
「へ??」
「ヘルマちゃんが明るいぷにぷにだとしたら、プリンちゃんはエロスなぷにぷに」
「…え、じゃあデニーズとガストの違いみたいな物ですか?」
「ん~…もっと明確な違いかな」
「じゃあスカイガールズとストライクウィッチーズとか?」
「ん~、あながち間違いじゃないわね」
「千昌夫とコロッケとか?」
「残念、離れちゃったよヘルマちゃん!」
「美川憲一とコロッケとか?」
「コロッケから離れようよ」
「渡哲也と渡瀬恒彦?」
「ん~、あながち兄弟ね」
「千葉妙子と世戸さおり?」
「ん~、あながち坂本少佐ね」
2人でコソコソ盛り上がっていると…、
「やめんか2人とも!!」
「プリ…じゃない、ハインリーケ大尉?!聞こえてました?!」
「あぁ!レンナルツは主旨わかってないし、下原も『あながち』って単語が言いたいだけだろう!」
「プリンちゃん、ツッコミの腕上げたね~!」
「うわあ…なんだか稽古してたくらい、綺麗なボケとツッコミですねえ;;」
***
ハインリーケ大尉と別れ、再び下原少尉と2人っきりになったであります。
人気のない海岸まで散歩をし………、
「ねえヘルマちゃん」
「はい、何でしょう?」
「水練に来たんじゃなかったの?;;私と油なんか売ってて良いの?」
「ハッ!!」
しまった!!つい下原少尉と一緒にいて、ずっとふざけてた気が;;
イカンであります!これもれっきとした訓練!今すぐ再開しなければ!;;
「そもそも、アナタが…」
「良いから良いから…ん?」
「どうしました?」
「そのさ…腰に付いてるのはなぁに?」
「…これくらい、扶桑にもあるでしょう!」
「ううん、わかってる。なんで水練に浮き輪なの?」
「ちっ、違うであります!これは水泳補助道具です!」
「…要するに浮き輪でしょ?」
「うっ…」
この女…なかなか鋭いであります;;;
「もしかして…」
「もしかして…?」
「ヘルマちゃんって、もしかして…」
「ああ~っ!皆まで言うな!皆まで言うなであります!!!!」
「そっかそっか~…へぇ…」
「………」
「………でも、そのままにしとく気?」
「いや、いずれかは…その…;;」
「その、ヘルマちゃんにとって『いずれか』はいつなの?」
「………;;」
「…よいしょっと!」
バシャーーーーンッ!!!!
すると、急に下原少尉が目の前の崖から海に飛び込んだであります;;
「しっ、下原少尉っ?!」
「おいでよ、ヘルマちゃん」
「でも…」
「良いこと教えてあげる。私ね、実は全然飛べなかったんだ」
「へ???」
「今では502部隊のエースって言われてるけどさあ」
「そんな事…自分で言います?!」
「まあまあまあ。最初、飛ぶのが怖くて怖くてしょうがなかった」
さっきまでの威勢は何処かへ行ったのか、急にしんみりした顔になったであります…。
「んで、どうゆうワケかリバウに転属させられて…とある鬼教官の部下になったんだ~」
「…それで…?」
「続きは、下まで来たら教えてあげる」
「むっ、無理です!こんな高い所から飛び込みだなんて…っ」
「そんなに高くないよ?」
「…っ」
「さっさとしろぉ!!!!へっぽこ曹長!!!!」
「っ?!」
「…って、昔言われたよ。今、意を決するチャンスだよ!」
ここまで言われたら………あぁ、思い出が走馬灯のように…
ミーナ中佐…アレは嫌だったけど、テクは一流でした…
唯一、私が主人公のシリーズ物だったのに思わぬところで最終回とは…
「えぇい!」
バシャーーーーーンッ!!!!
あれ…?ここ、足がつくでありますよ?!
「あれ…?そんなに深くない?」
「でしょ?やれば出来る子じゃない」
「とっ、当然であります!」
「ここまで来たら…いってみよ~!」
「………っ」
ハ…ハメられたぁ~っ!!!!
「まずは10秒間、海に顔を付けてみようか」
「でも…」
「良いから良いから!」
***
「ふう…」
すっかり陽が傾きかけた頃、私は5m泳げるようになってたであります…。
もうヘトヘトで、砂浜に寝っ転がってます;;立つ気力もないという…;;
てかこの人、ほんわかしてる雰囲気なのに泳ぎの練習時は鬼ですよ!!??
「お疲れ、ヘルマちゃん」
「………」
「あれぇ、怒ってるぅ?」
「疲れてんです!」
「そうかぁ」
「ふう…」
「言いかけてた話の続き、話すね」
「どうぞ、ご勝手に」
「とある鬼教官…まあ坂本さんって名前なんだけど」
「501部隊の?」
「うん。出来ない事を後回しにしてたらね、こんな事言われたんだ」
「どんな事言われたんですか?」
「『明日やろうは、馬鹿やろうだ!わっはっは』って」
「………」
「まあ最後の笑いはどうでも良いとして、そうだよね…一度後回しにしちゃう癖が出来ちゃうと、この先ずっと逃げちゃう事になるんだよ?」
言ってる事は、一理ある…かも…
「その言葉で私は意識改革できたんだ~。んで、今や502部隊のエースってワケ」
「一言余計です!」
「酷~い!酷い。ヘルマちゃん!」
でも何だかんだ言って、下原少尉には感謝…してるでありますよ…?
***
「ただ今戻ってまいりました!」
2日後、私は基地へ戻って来たであります!
あ、ハルトマン中尉は低血圧な声(いつも?)で「私は…良い」って言って慰安旅こ…ゲフンゲフン、水練への参加を拒否したであります。
「おかえり、ヘルマ」
「あ、これお土産です。ワルネミュンデのタペストリーです」
「ありがとう…。どうだった?」
「はい…色々な事が学べました」
「そう」
「あの…」
「何?」
「お1つ聞いてもよろしいですか?」
「…構わない」
「ハルトマン中尉は数々の実験などをなさってますが、アイデアが思い立ったらすぐ行動に移すタイプですか?たとえ眠くても」
「ううん」
…へ??
「流石に私でも、睡眠欲や休憩したいって欲には勝てない」
「え…えぇぇ」
「私のモットーは『明日出来る事は、明日にでも出来る』だから」
「………;;;」
…まっ、まあ人によって考え方は様々ですね!;;
『明日やろうは、馬鹿やろうだ!』か『明日出来る事は、明日にでも出来る』でありますよ…ね?
【おわれ】