ストライクウィッチーズIF 宮藤芳佳編 勇者は再び


1947年 扶桑皇国。

芳佳「はい、これでもう大丈夫だよ」
女の子「わあ、お姉ちゃんありがとう!」
芳佳「どういたしまして、でも、また転ばないように気をつけてね」
女の子「うん!」

女の子「バイバ~イ!」
芳佳「怪我したらいつでも来てね~」

芳佳「ふぅ・・・」
清佳「お疲れ様、芳佳、お茶でも飲む?」
芳佳「うん、ありがとう、お母さん」

 私がロマーニャでの戦いを終えて、2年が経っていた。戦いで魔法力を全て失った私は、実家の診療所で働いている。
 何事も無く、ただ平凡な日々を送る毎日だった。でも・・・

芳佳「お母さん、おばあちゃんは?」
清佳「部屋で寝ているわ、今のところ大丈夫みたい」
芳佳「そっか」

 一年前、おばあちゃんは病気になってしまった。でも、安静にしていれば問題は無いようだ。私と違って魔法力はまだ健在であるにも関わらず、突然の病だった。こんな時、私に魔法力があったらと思うと、自分自身に腹が立つ。

芳佳(・・・今日も良い天気だな)

 あの青い空を見ていると、かつてストライカーユニットで空を飛んでいた頃を思い出す。あの時の事が、何もかも夢だったようにも感じた。でも、一緒に戦った仲間と過ごした時間は決して夢ではないとわかっている。

芳佳(みんな・・・どうしているかな・・・あの空を今でも守っているのかな・・・)

ウゥーーーーーーーーーーーーーーーーーッ・・・・・・

芳佳「!?」

 突然、どこからともなく警報が鳴り出した。

清佳「何かしら・・・?」
みっちゃん「芳佳ちゃん!」
芳佳「みっちゃん!?どうしたの!?何があったの!?」
みっちゃん「さっき軍隊の人から聞いたんだけどね・・・ネウロイがこっちに近づいているって!」
芳佳「え・・・!?」

 ネウロイ、私達が最も恐れる敵。世界を破壊し、人々の住む街を滅ぼす異形の敵。

芳佳「何で・・・何でネウロイが扶桑に!?」
みっちゃん「わからないけど、とにかく軍の人達が速やかに避難しなさいって言ってた!」
芳佳「でも、おばあちゃんが・・・」
芳子「私なら大丈夫だよ、芳佳・・・」
芳佳「あ、おばあちゃん!」
清佳「体は大丈夫なんですか?」
芳子「あぁ・・・これくらいなら大丈夫だよ」
芳佳「じゃあ、早く避難所に行かないと!みっちゃん、案内して!」
みっちゃん「うん!」

避難所

芳佳「本当にここで大丈夫なのかな・・・?」
みっちゃん「いざという時にはウィッチの人達が付いているから大丈夫だよ」
芳佳「だと良いんだけど・・・」


扶桑皇国海域

扶桑海軍兵1「ネウロイ発見!攻撃開始!」

ドンッ!!ドンッ!!ダダダダダダダダダダダダダッ!!

ネウロイ「オオオオオオォォォォォォォン・・・・・・」

バシュウッ!!ドオオォォォン・・・!!

扶桑海軍兵2「第一艦隊、大破!」
扶桑海軍兵3「くそ!化け物め・・・!」
海軍大佐「怯むな!何としても奴をこの場で仕留めるのだ!!」
全員「了解!」



芳佳「・・・・・・・・・」
みっちゃん「芳佳ちゃん、大丈夫?」
芳佳「うん、大丈夫・・・」

 あの時と同じだ。赤城に乗っていた時、ネウロイに襲われて、おびえていたあの時と同じだ。でも、もう私には魔法力は無い。戦う力は何一つ残っていない。こういう時くらい、魔法力がほんの少しでも良いから出てほしい。そんな思いが込みあがってくる。

芳佳(・・・私、もう誰も守れないのかな・・・誰も助けられないのかな・・・)

オオオォォォォォォォォォン・・・・・・

芳佳「!?」

 突然、聞き覚えのある音に私は震えた。ネウロイの咆哮が、扶桑に響きだした。

兵士1「ネウロイ出現!攻撃準備!」
兵士2「海軍の防衛は破られたのか・・・!くそ・・・!」

ネウロイ「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・」

 外を見てみると、巨大なネウロイが黒い体をうねりながら空を飛んでいた。その姿に、私はあの時以上の恐怖を感じた。

カアアアァァァァ・・・・・・

芳佳(あ!あれは!)

 ネウロイの身体が赤く光りだした。そして・・・

バシュウッ!!ズドオオオォォォォォォォォォン・・・!!!

 赤い閃光が放たれ、地上を焼き尽くしていく・・・。私はただ、見ている事しかできなかった・・・軍と見習いのウィッチが、ネウロイの攻撃に苦戦している絶望的な光景をただ見ている事しかできなかった。

芳佳「・・・・・・」
みっちゃん「芳佳ちゃん!中に入って!危ないよ!芳佳ちゃん!」
芳佳「・・・・・・何で」
みっちゃん「・・・芳佳ちゃん?」
芳佳「何で・・・こんな事に・・・」

 私は悔しかった。ロマーニャのネウロイの巣を破壊しても、ネウロイは必ずまたどこかに現れる。それがよりにもよって、私の故郷だなんて・・・。私は自分の無力さに涙を流した。

芳佳「私・・・何も守りきれてない・・・私は・・・私は・・・」
みっちゃん「芳佳ちゃん・・・・・・」
芳佳「うっ・・・うっ・・・」

 何が守る事が出来ただ。何が願いが叶っただ。私はただ力を失ってしまっただけじゃないか。私は、何の為に力を使ったのか・・・。誰の為に使ったのか・・・。


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