誕生日のお願い


【誕生日のお願い】

「待ってよ、リーネちゃん」
「へへ、早くおいでよ芳佳ちゃん」
今日は8月18日、私とサーニャちゃんにとっては一年に一度の特別な日。
お父さん、私16歳になったよ。
去年と同じようにみんなが私たちを祝ってくれて、本当に幸せな気分。
誕生会も終わって今は、私とリーネちゃんの2人きりの時間。
「2人きりでお茶会をやろう」っていうリーネちゃんのお誘いに乗って、私は基地のバルコニーへと向かっていた。

「ま、待ってサーニャ……」
バルコニーへと向かう途中、エイラさんとサーニャちゃんの部屋から不意にエイラさんの声が聞こえてきた。
普段のエイラさんからは想像できないくらいにとても弱々しい声だった。
「照れてるの? エイラ、可愛い」
今度はサーニャちゃんの声。
エイラさんの声とは対照的に透き通ったはっきりとした声だ。
「どうしたの、芳佳ちゃん?」
エイラさん達の部屋の前で立ち止った私を不思議に思ったのか、リーネちゃんが私のもとに駆け寄ってきた。
「うん。なんだか2人の会話が気になって……」
私は2人に気付かれないように、部屋のドアをそーっと開けてみる。
「よ、芳佳ちゃん!? 覗きはダメだよぉ」
「分かってるけど好奇心には勝てなくて……わぁ、見てリーネちゃん。すごい事になってるよ」
「えっ……うわぁ、ホントすごい事になってるね」
私たちの目に映ったのは、ベッドの上で横になっているエイラさんとその上に跨るサーニャちゃんの姿。
えっと、これってどういう状況……?

「サーニャ、な、何でこんな事……」
と、さっきより一層、弱々しい声でサーニャちゃんに呟くエイラさん。
「何でって、『今日はサーニャの誕生日なんだから、サーニャの願い何でも叶えてやるぞ』って言ってきたのはエイラのほうでしょ? だから……」
エイラさんの声を真似ながらサーニャちゃんはそう答えると、エイラさんの唇にそっと自分の唇を重ねた。
うわぁ、他人のキスって何だかすごく色っぽいや。
「サ、サーニャ……あぅ」
「これが私のお願い。あなたを私だけのモノにしたいの……」
サーニャちゃんはエイラさんの白い肌を撫でながら言葉を続ける。
「ねぇエイラ、私のお願い、叶えてくれるよね……?」
「は、はい……」
エイラさんのその言葉を聞くと、サーニャちゃんは満足げに微笑んだ。
「イイコね、エイラ。だいすき」
そう言って、サーニャちゃんはさっきより深いキスをエイラさんと交わした。
「サー……ニャ……んんっ」

「ねぇ芳佳ちゃん、これ以上見るのはやめようよ……」
と、顔を真っ赤にしたリーネちゃんが言う。
「そ、そうだね……」
私は開けた時と同様、2人に気付かれないように部屋のドアをそーっと閉める。
サーニャちゃん、エイラさんと末永くお幸せにね。

「……芳佳ちゃんは、私に何かお願い事とかある?」
「え?」
エイラさん達の部屋のドアを閉めてから少しして、リーネちゃんが私にそう訊ねてきた。
「その……芳佳ちゃん、私の事好きにしてもいいよ」
頬を真っ赤に染め、もじもじしながらリーネちゃんが私に呟く。
もう、そんな表情で誘われたら私、ガマンできないよ。
「ごめんね、リーネちゃん。2人だけのお茶会はまた今度にしよう」
「ふぇ!? 芳佳……ちゃん?」
私は魔力を解放してリーネちゃんを抱き上げ、行き先をバルコニーからある場所へと変える。
その場所は……


「ここって……」
「えへへ、ここなら誰の邪魔も入らないでしょ?」
私たちがやって来たのは基地のゲストルーム。
以前、ハルトマンさんとマルセイユさんが共同で使っていた部屋だ。
私はドアを開けて、リーネちゃんを部屋のベッドに押し倒す。
「きゃっ!」
「私のお願いはサーニャちゃんと一緒。リーネちゃんを私だけのモノにしたい……んっ」
私が口付けを落とすと、リーネちゃんは元々真っ赤だった顔を更に真っ赤にさせる。
もう、本当にリーネちゃんは可愛いな。
「リーネちゃん、愛してるよ」
「芳佳ちゃん、私も……んっ」

私たちはそれからしばらくの間、お互いの唇を重ね合った。
お互いの愛を確かめ合うように何度も、何度も。

~Fin~


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