無題


…ああ大将、やっぱりあなたはすごい人です。

二人で過ごす休日、街に出てみれば感じる視線、視線、視線。
わたしにじゃあありません。わたしの隣の自由人、ドミニカ・S・ジェンタイルに注がれる視線です。

格好いい、素敵。
そんな言葉が方々から聞こえてきます。
視界の端に映るのは、ふわふわした服装の可愛らしい女の子だったり、すらりとした脚を晒す美しい女性だったり…。
対するわたしは、作業着に毛が生えたような―毛すら生えてないかも―格好で。
大将に見惚れる彼女たちには、もしかしたらわたしは見えていないのかも。

…ほら。
わたしがお手洗いに行った数分で、大将の周りには女の子が。大将がその手に持っているクレープは、きっと女の子から貰ったものなのでしょう。
ウィッチなの。出身は。今度はいつ街に来るの。―これからどこに行くの。
きらきらした女の子たちに囲まれる大将は、それはそれは様になっていて、わたしは立ち尽くしてしまいました。
あそこに切り込む勇気は、出ませんって。
そこそこ人の多い休日の街中、大柄とは言えないわたしは埋もれるばかり。ただでさえ大将の周りには人が立っているのだから、わたしから声をかけなきゃ、気づいてなんて、

「ジェーン」

…ああ大将、やっぱりあなたはすごい人です。



あいつを待つ間、何組かに話しかけられたが、クレープを渡してきたこの集団は、とりわけ長い。
これからどこに行くの、って、まさかついてくる気なのか。
ふいに目をやれば、なんだ、戻ってるじゃないか。
小柄なジェーンは埋もれがちなんだから、もっと主張しないと流されるぞ。
声をかければ、びっくりしたんだか嬉しいんだか、よくわからない表情をして、のろのろ近づいてくるジェーン。
じゃあ、もう行くから。
そう言い残して、集団とはおさらばだ。まったく…。

「ジェーン、お前がいないだけで疲れるよ」

まったく、お前はすごい奴だな。

そう言って肩を抱き寄せると、ジェーンは真っ赤な顔でため息をついて、「やっぱり大将は…」とかなんとかぼやいていた。


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