Pocky Game
ここはとある女子高の学生寮の一室……
「ねぇ、先生」
部屋の主であるクルピンスキーが先輩でルームメイトでもあるロスマンの愛称を呼ぶ。
「なに?」
ノートと睨めっこしていたロスマンが顔を上げ、クルピンスキーの方を見る。
「ヒマ」
クルピンスキーがそう呟くと、ロスマンは「そう」とだけ返しまたノートの方に視線を戻す。
「え? それだけ!?」
「暇ならあなたも勉強しなさい。赤点取っても知らないわよ」
「ボクなら大丈夫。テストは一夜漬けで大体なんとかなるから。先生も勉強なんかしないで遊ぼうよ」
「ダメ。まだまだ勉強しなきゃいけない教科があるもの」
「ちょっと休憩するのもダメ? 無理のしすぎは身体に毒だよ」
クルピンスキーの言うことも一理ある。気が付けば、かれこれ3時間以上机と向き合っていた。
無理をしすぎて身体を壊しては元も子もない。そう思ったロスマンは机から離れ、クルピンスキーの隣に腰を下ろす。
「それもそうね。少しは息抜きも必要よね」
「さすが先生、話が分かるね。ねぇ、ゲームしようよ」
「ゲーム?」
「うん。負けた方が勝った方のお菓子代を1ヶ月分持つってのはどう?」
「面白いわね。何のゲームをやるの?」
「へへ。これだよ、これ」
クルピンスキーがニヤリと笑いながらチョコの付いた棒状のビスケットを袋から取り出す。
それを見たロスマンはクルピンスキーが何のゲームをやろうとしているのか理解する。
「こ、これってまさか……!」
「そ、ポッキーゲームだよ。先にポッキーを折ったほうが負けってことで」
「ね、ねぇ……やっぱり他のゲームにしない?」
ポッキーゲームといえば、普通は恋人同士で行うゲームだ。
そのようなゲームをクルピンスキーとすることに少なからず抵抗を覚えるロスマン。
「あれ? 先生ともあろう人がボクに勝つ自信がないのかな?」
と、ロスマンを挑発するような口調でクルピンスキーが言う。
その言葉を聞いたロスマンは思わずむっとなって、クルピンスキーの申し出を受け入れてしまう。
「いいわ。やってやろうじゃないの」
「そうこなくっちゃ。先攻は先生からでいいよ」
「……ええ。じゃあ、行くわよ」
ロスマンはポッキーのチョコの部分を咥え、クルピンスキーも反対のスナックの部分を咥える。
(最初は一口分くらい……かな?)
ロスマンは頬を染めながら、ポッキーを一口かじる。
かじった分だけクルピンスキーとの距離が縮まることにロスマンは思わずドキドキを感じてしまう。
(伯爵って綺麗な顔立ちしてるわね……って、私ったら何考えてるのよ)
顔をポッキーの箱のように真っ赤にさせてるロスマンとは対照的に、余裕の笑みのクルピンスキー。
彼女はポッキーをスナックの部分から、小動物のように素早く食べ進めていく。
(ちょ、ちょっと! そんなに早く食べたらく、唇があたっちゃう……)
ロスマンが思った通り、クルピンスキーはポッキーを全部食べきると、
そのままロスマンの唇をとらえ彼女を自分のベッドへ押し倒す。
「んっ……やぁっ」
「ごめんね。先生の可愛い顔を間近で見てたら我慢できなかった」
「……こ、こんなの反則よ! あんたの反則負け!」
ロスマンは足をジタバタさせて精一杯の抵抗をするも、力では全くクルピンスキーに敵わない。
「先生とキスできるなら、お菓子代1ヶ月分くらい安いもんだよ」
クルピンスキーはそう言うと、今度はロスマンの首の辺りに自分の唇を重ねる。
「はぁっ……んっ」
「ねぇ、エディータ」
耳元に甘い声でロスマンの名前を囁くクルピンスキー。
「な、何よ……」
「今日一日ボクに付き合ってくれないかな? テストまでまだ時間もあるし、一日くらいならいいでしょ?」
ロスマンは俯き、考え込むような表情をする。
少しして、「……きょ、今日だけよ」と、どこかのスオムス娘のような台詞を顔を赤らめながら言う。
そんなロスマンの可愛らしい仕草を見て、クルピンスキーは満足気に微笑む。
(あはは、本当に可愛い人だな……)
クルピンスキーはベッドに押し倒したロスマンを抱き上げると、もう一度彼女の唇に口付けを落とす。
このキスがいつまで続くのか、それは2人のみぞ知ることだ。
~Fin~