ウィルマサンタのプレゼント


――12月24日、サトゥルヌス・イブのその日、ワイト島分遣隊基地ではパーティーに向けて
ウィルマとアメリーがケーキ作りに励んでいた。

「ウィルマさん、イチゴ洗い終わりました」
「ありがとう。じゃあ、そこに均等に盛り付けてくれない?」
「は~い」
アメリーはショートケーキの上にイチゴを1個1個丁寧に乗せていく。
そんな彼女を尻目に、フランとラウラは乗りたてのイチゴをひょいと摘んで口へと運ぶ。

「イチゴ……おいしい」
「うんうん、甘酸っぱくていい感じ」
「あっ、フランさんもラウラさんもつまみ食いはダメですよ~」
「何よ。ちょっとくらい、いいじゃない」
「ダメなものはダメです!……って、言ってるそばからつまみ食いしないでください~」
よほどお腹が空いてるのか、尚もつまみ食いを続けるフランとラウラ。
そんな2人を見かねて隊長の美佐は、フルーツの盛り合わせをテーブルに乗せる。
「全く、フランもラウラもしょうがないわね……繋ぎにこれでも食べてなさい」
「わーい、隊長大好き~」
「ん、おいしい……」
満足気にフルーツを食べる2人を見て、美佐も自然と笑みがこぼれる。
「ふふっ、サトゥルヌスにパーティーなんて久しぶりだから何だか楽しいわ」
「前の部隊にいた時はパーティーとかしなかったの?」
「うん。私、去年の12月24日は任務中に負傷しちゃって……それどころじゃなかったから」
美佐がそう言うと、場の雰囲気がしんと静まり返る。
ウィルマは悪いことを聞いてしまったと思い、申し訳なさそうな表情で美佐に謝る。
「あっ、ごめん……辛いこと思い出させちゃって」
「ううん、気にしないで。そりゃ、怪我した時は『何で私が』って思ったけど、今は療養でここに来れたことに感謝してるの。
こうやってかけがえない仲間と出会うこともできたしね……なんて、ちょっとクサかったかな?」
と、美佐が照れくさそうに頬をかく。
「隊長……」
美佐の思いもよらぬ告白に隊員たちは心をほっこりさせる。
ひょんな偶然からブリタニアの辺鄙な基地に集められた5人のウィッチ。
最初はバラバラだった彼女たちも心を通わせるうちにいつしか、お互いの存在がかけがえのないものになっていたのであった……

「さて、ケーキも完成したことだしパーティーを始めるとしますか。隊長さん、号令お願い」
「ええ。それじゃあ、楽しいパーティーにしましょう。乾杯!」
美佐の乾杯の号令のもと、パーティーが始まった。
ウィルマとアメリーが作った料理を食べながら、みんなで今年1年の思い出を語り合ったりした。
ウィルマの着任日にみんなでお風呂に入った事、赤城の護衛任務に就いた事、海水浴に行った事……
そんな思い出を語り合っていると、不意にフランが思いがけない言葉を口にした。
「1年ってあっという間ね……今年もサンタさん、来てくれるかな」
フランのその発言に他の4人は思わず目を丸くしてしまう。
「え?」
「ほら、サトゥルヌスにサンタさんからプレゼントを貰わないと1年って終わった気がしないじゃない? みんなはそう思わない?」

「フランさん、もしかしてまだサンタクロースの存在を信じてるんじゃ……」
「……そうみたいね」
どう反応していいか分からず、困った顔で美佐とアメリーはヒソヒソ話をする。
「何よ、2人でヒソヒソして……あたし何か変なこと言った?」
「え? な、なんでもないです。あはは……」
「サンタって、ウィッチの基地にも来るのかな」
フランにさり気なく問いかけるようにラウラが呟く。
「絶対来るわよ。去年、あたしがリベリオンの養成学校にいた時だってプレゼント、届けてくれたもん」
と、胸を張って自信満々にフランが答える。
(きっと、養成学校の教官さんが良い人だったのね……こりゃ計画を変更する必要があるかな)
そんな目をキラキラさせながらサンタクロースの事を話すフランを見て、ウィルマはある事を考えていた……

――やがてパーティーもお開きとなり、片付けが終わった頃にはすっかり深夜と呼べる時間になっていた。
アメリーとフランとラウラはよほど眠かったのか、談話室のソファでぐっすり眠っている。
美佐は、そんなソファに並んで仲良く眠る3人にそっと毛布をかける。
「みんな、疲れちゃったのね……あれ? そう言えば、ウィルマさんはどこ行ったのかしら」
「隊長さん、隊長さん」
美佐が辺りをキョロキョロしてると、不意にウィルマが後ろから声をかけてきた。
「あら、ウィルマさん……って、どうしたの!? その格好?」
美佐が振り返るとそこにいたのは、赤と白の衣装に身を包んだウィルマの姿だった。
「しーっ! みんなが起きたら、計画が台無しになっちゃうから」
サンタクロースの格好をしたウィルマは、肩に背負った白い大きな袋から何かを取り出すと、
それを眠っている3人のそばに置いた。
「それは……?」
「えへへ、ウィルマサンタからみんなへのプレゼントよ。本当は、パーティーの時に私がこの格好でみんなに渡そうと思ったんだけど……
 サンタさんを信じてるフランには、こうしたほうが夢があると思ってね」
と、熟睡しているフランの頭を撫でながらウィルマが言う。
「あっ、そうそう。隊長さんにもプレゼントあるの。はい、これ」
そう言ってウィルマは、袋の中から箱を取り出してそれを美佐に渡す。
「あら、ありがとう。それにしても、準備がいいのね。今日のこの日のために、わざわざプレゼントとその衣装を用意したの?」
「まあね。私、パーティーとか好きだから、昔は兄弟たちとよくこういう事やっててね……今はここにいるみんなが家族みたいなものだし、
せっかくだから、家族と思いきり今を楽しみたいじゃない?……なんて、ちょっとクサかったかしら」
「もう、それさっきの私の台詞じゃない」
「あはは……さて、私もそろそろ寝るとしますか。お休み、隊長さん」
「ええ。お休みなさい」

(さてと、明日の朝が楽しみね……フランはどんな反応をするかな? みんな、喜んでくれるかしら……)
そんな事を考えながら、分遣隊基地のサンタさんは寝室へと向かうのだった。

~Fin~


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