happy dream II


「リーネちゃんは私の嫁だから!」

 って芳佳が言ってたよー。ニヒヒ。
 と、突然ただそれだけを聞かされたリーネは、ニヤニヤするシャーリーとルッキーニの前で頬に手をやり、
暫く言葉の意味を反芻した後、やがてあたふたと慌て始めた。
先程から始めていた夕食の下ごしらえも忘れて、厨房の壁にもたれ、はふうと溜め息を付く。
「わ、私、どうすれば。でも本当に芳佳ちゃん、言ったんですか?」
 シャーリーは力強く頷いてみせた。
「ああ、部屋の外まですんごい聞こえたよ。あれは、単なる寝言とかじゃない。もはや、れっきとした宣言だね」
「ダネー」
 ルッキーニがにんまりと笑うと、リーネの胸をつんつんと人差し指でつつきながら言った。
「アアアゥァー、この501で第二位のおっきなオムネも、芳佳のところにオヨメにいってしまうのか~ ウジュー」
 リーネはひゃっと小さな悲鳴を上げてさと胸を腕で隠すと、ルッキーニに向かい問うた。
「ルッキーニちゃん、それってどう言う意味?」
「え? そのまんまだけど」
「ちなみに第一位は?」
「シャーリー。悪いけど渡さないよ?」
 ルッキーニに抱きつかれたシャーリーはまんざらでもない顔をして笑った。そんな二人を見て呆気に取られるリーネ。
「何か主旨が変わってきてるよ、ルッキーニちゃん」

「全く、宮藤さんは何を言ってるのかと」
 噂を聞きつけ、呆れ半分怒り半分のペリーヌは、厨房に来るなり、リーネを見て呟いた。
「あ、あの、ペリーヌさん」
「何ですのリーネさん?」
「芳佳ちゃんを悪く言わないで……多分、その」
「寝言にしては趣味が悪過ぎますわ」
「えっ、でも、芳佳ちゃんなら……」
「『なら』って、リーネさんまさか」
 ペリーヌの危惧は現実のものとなりかけていた。

「わ、私、どうすれば芳佳ちゃんのお嫁さんになれるのかなって、色々考えてみたんです」
「ふむふむ」
「ウキャーさすがヨメヨメ! で、どうすんの?」
「ちょっとリーネさん、考えが先走り過ぎてませんこと?」
 シャーリーとルッキーニ、ペリーヌを前に、顔を真っ赤にしながら、リーネは自分の考え……決意にも似た言葉を述べる。
「ブリタニアの法律でも、多分扶桑の法律でも、私達結婚は出来ないと思うから……」
「当たり前でしょうに」
 呆れるペリーヌ。
「だから、とりあえず、わ、私と、私の家族と、よよ芳佳ちゃんで養子縁組とか」
「おおー具体的だねー」
「ダネー。ニヒヒ」
「妙に生々しいですわね」
「えっダメですか? なら、結婚出来る法律がある、何処か他の国に二人で移住するとか」
「ああー。そう言えばあたしの国、確かどっかの州で、法的に同性婚出来るとこがあ……」
「教えて下さいシャーリーさん! 私、芳佳ちゃん連れて移住します! それもっと詳しく!」
「決断はやっ!」
 いきなり詰め寄って来たリーネに、少々焦るシャーリー。
「リーネさん、少し落ち着きなさいな」
 ペリーヌはハーブティーをリーネに飲ませた。
 ぐいっと一気に呷ると、ふう、と一息つく。途端にリーネの思考が更に加速する。
「他の手段としては、私が芳佳ちゃんの故郷の扶桑に、嫁入りと言うか事実婚と言う事もアリだと思うんです」
「ヤケに積極的だなー、リーネは」
「それ以前にリーネさん、宮藤さんの言葉が本当かどうか確かめなくてもよろしくて?」
「芳佳ちゃんは、有言実行のウィッチなんです!」
「言い切ったよ」
「でもあれは寝言って話じゃ……」
「私、今日を最高の日にしてみせます!」
「……何だか最悪の日になりそうな気がしますわ」
「リーネも一途だなあ」
「とりあえずの心配は……私、扶桑の料理で食べられないモノが幾つか有るんですけど」
「えっ心配するとこ、そこだけ?」
「ブリタニア人にも食べられないモノって有るんだね~あたし知らなかった」
「ルッキーニちゃん酷い! お茶とお菓子には自信有りますから!」
「そこ自慢してどうするの」
 厨房に近付く足音。そのリズムを聞いたシャーリーはにやけた。
「……お? 話をすれば、ご本人様の登場だぞ」
「えっ? そんな、まだ心の準備が」
「あんだけ色々考えてたのに準備出来てなかったのか」
「大丈夫ですの、リーネさん?」
「じゃあ、あたし芳佳見に行く~」
「ルッキーニ、宮藤にいきなり変な事するなよ? ……ま、あたしも見に行ってみるか」
「ちょっと二人共……で、リーネさん?」
「だだだだ大丈夫です。ももっ問題ないですから」
「そんなに緊張して何処が大丈夫なんですの」
 心配するペリーヌ。
 ひとり興奮と緊張が入り交じるリーネをよそに、やって来た芳佳をはやしたてるシャーリーとルッキーニ。

 リーネはごくりと、唾を飲み込んだ。

end


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