happy dream III
「リーネちゃんは私の嫁だから!」
「……ってお前ホントに言ったのカー?」
エイラはにやけ半分呆れ半分の顔で芳佳を見た。
「はい、言った様な……シャーリーさん達に聞かれちゃったし」
申し訳なさそうな顔で、ちらっとお騒がせな二人組を見る。
「あたしらは、ちゃんと、はっきりと聞いたぞ!? なあルッキーニ」
「ンニャンニャ シャーリーといっしょに聞いた聞いたー」
「芳佳ちゃん、実は、シャーリーさんとルッキーニちゃんの悪戯じゃなくて?」
サーニャの問い掛けに、名指しされた二人は言いがかりだー、とぶーたれる。
「ま、こればっかりは宮藤さんに責任を取って貰うしか無いですわね」
ペリーヌが突き放す。
「ああもう、みんな私が悪いんです!」
錯乱気味に頭を抱えて叫ぶ芳佳。
「落ち着いて芳佳ちゃん」
連れ添う妻の如く、芳佳を支えるリーネ。
「で? 言った以上は……、って話だったよナ」
エイラは慣れた手つきでタロットカードをシャッフルし始めた。
「あの、エイラさん、何か占ってくれるんですか……?」
「宮藤が現在絶賛大ピンチ中だからナー。占ってやる代わりに、今度掃除当番か洗濯当番変わってクレ」
「ええ、酷い、なんか押し売りみたい」
「誰が押し売りダッテ?」
「いえ何でも……」
「じゃあ、占うゾ」
エイラはカードを丁寧に一枚めくって、じっと凝視する。
「どうなんです? 私」
「おっ……」
「はい?」
絶句したエイラに近付いた芳佳を振り払うエイラ。
「こら宮藤、覗き込むナ。お前の邪念が入ってくるダロ」
「ええっ? そういうもんなんですか?」
「そもそも、宮藤溜まり過ぎダロ。リーネの胸ばっかりって出てるゾ」
「えええ!? 私そんな邪な事は」
「じゃあその手は何ダ」
部屋に居た全員が芳佳の手に注目する。今まさにリーネに寄り掛かったついでに、撓わに熟れた二つの乳房に顔を埋め指を……
「ちょっ、芳佳ちゃん!」
「宮藤お前大胆だなー」
「芳佳だいたーん」
シャーリーとルッキーニが今更の様にびっくりした顔を作る。
「ちっ違うんです、これは」
「呆れたこと」
ペリーヌがつまらなそうに髪をかき上げる。
「でも芳佳ちゃんとリーネさんはスキンシップ多くて良いな……エイラは、私に何も」
「えっ!?」
サーニャの爆弾発言を聞き、一斉にエイラを見る。ぎくりとしたエイラは思わずタロットを一枚落とす。
「あれ? 何か、吊された人の描かれたカードが」
「ウワアアアア! 見るな馬鹿ッ!」
そっと拾い上げた芳佳からタロットを引ったくると、エイラは顔を真っ赤にして無言でサーニャの腕を取り、部屋から出て行った。
「あの、エイラさん……」
「そっとしておいてやれ」
何かを悟った顔で芳佳に呟くシャーリー。
「はあ」
「それでね、芳佳ちゃん」
「うん、どうしたのリーネちゃん?」
「芳佳ちゃん、私の家に住む? それとも私が芳佳ちゃんの故郷の扶桑に行った方が良い? あとはシャーリーさんの国に行って合法的に式を挙げる方法も有るって聞いたけど」
「リーネちゃん、話飛躍してない?」
「大丈夫、家族なら私が説得するから」
「そうじゃなくてね」
「私、芳佳ちゃんの為にも頑張る!」
「えっ……」
絶句する芳佳。
ペリーヌはこれ以上付き合いきれぬとばかりに、ふうと溜め息ひとつ付くと部屋から出て行った。
「あの……」
助けを求め周りを見渡す。いつの間に移動したのか、シャーリーとルッキーニは部屋の扉からそっと様子を伺っている。
「シャーリーさん、ルッキーニちゃん、どうして逃げるの!?」
「二人を邪魔しちゃ悪いからな」
「ナー! ニヒヒ」
「ま、頑張りなよ」
シャーリーは遠い目をして、ルッキーニを連れて部屋から去った。
「ねえ芳佳ちゃん聞いてる? この戦いが終わったら、私達、結婚するんだから、今からきちんと決めておかないと」
「リーネちゃん話を聞いて」
芳佳はリーネの肩をがしっと掴んだ。
「芳佳ちゃん、まだ話の途中なのに、大胆……」
「そうじゃなくてね」
end