color of love II


「おおっ……これは!」
 トゥルーデは何気なくテーブルに置かれた一枚の写真を見るなり、目の色が変わった。そこをすかさずエイラがかっさらっていく。
「こらァ! サーニャをそんな目で見んナ! 汚れるダロ」
「何を言う、失礼な!」
「まあまあ二人とも」
 言いつつ、エイラの手元からするりと写真を取り上げて、へへーと見入るエーリカ。
「あ、おい中尉!」
「サーにゃん可愛いね。この服、戦勝記念だって」
 写真に写るサーニャの姿。それは常日頃見慣れた戦闘用の服ではなく、パレード用のものらしい。
「なるほど。それであんな可愛いらしい……」
「おッ? 大尉、今可愛いとか言ったカ? 言ったカ?」
 ニヤニヤしながらトゥルーデの脇を突くエイラ。
「トゥルーデは妹馬鹿だからね、仕方無いよ」
「何だその言い方は」
 腕組みしたままエーリカとエイラを交互に睨む。
「そうだ、エイラも気をつけるんだね。案外近い所に恐ろしい『お姉ちゃん』が居るかも知れないよ?」
「うえエ? それはちょっとナ……」
 トゥルーデをチラ見しながら、エイラはおずおずと去っていく。むっとする「お姉ちゃん」。
「ところでトゥルーデ。戦勝パレード用もそうなんだけど、ちょっと付き合ってくれる?」
 サーニャの写真をささっと胸ポケットにしまい込むと、エーリカは改めて幾つかの紙を取り出した。
「藪から棒に何だ、エーリカ」
「アグレッサー用戦闘服ってのも有るらしいよ」
「アグレッサー、か。ふむ。と言う事は、戦術教官に誰かがなると言う訳か」
「うん。トゥルーデと私」
「んんっ? どう言う事だ? 私達が教官? 教える前にまず戦うのが先だろう」
 いきなりの事でやや混乱気味のトゥルーデ。エーリカは顔を近付けると真顔で言った。
「まあ、私はあと数年時間があるけど、トゥルーデはウィッチとしてのあがりが近いんだよ? ミーナもそうだけど」
「それは、まあ」
「まだ現役で目一杯飛べるうちに、後輩にテクニックを教えるのも良いんじゃない? それもエースの立派な役目だと思うよ」
 言われてみれば、とトゥルーデは自分を省みる。常に戦いの最前線に居た。そして今も居る。だからこそ、と言う気持ちも強い。ゆっくり絞り出すかの様に呟く。
「確かに、教育は大事だ。だが、私は一匹でも多くの……」
「可愛い妹みたいな後輩が居るのにな」
 茶化すエーリカに、トゥルーデは肩透かしを食らった感じで思わずきつめのトーンで否定する。
「私を頭のおかしな姉みたいに言うのはやめないか! ……で、どんな奴なんだ?」
「興味ありありじゃん。トゥルーデってば」
 エーリカは先程取り出した何枚かのラフスケッチを卓上に並べ、トゥルーデに見せた。
「ま、とりあえずデザイン。アグレッサー用戦闘服案その一。ネウロイタイプ」
「……おい。ただ真っ黒な下地に薄いハニカム模様が描かれてるだけじゃないか。黒髪のカツラまであるし、何だこれ」
「ミヤフジや504が以前接触した、謎のネウロイに似せてみました~」
「あれは特殊な奴だろ? そもそも腕からビームとか出せないからな。て言うか幾ら敵の色が黒だからって、ここまで無理矢理に似せなくても……」
「じゃあこれ。案その二。派手めの砂漠迷彩」
「アフリカにでも行けと言うのか」
「あれ、マルセイユの事でも思い出した? にしし。ならこっち。案その三。派手めの森林迷彩」
「ちょっと地味、かな」
「うーん。なら案その四、派手めの青紺模様」
「お、これは……」
「反応したね、トゥルーデ。私もこれかなーって思った」
「エーリカもか。何となくだが501に似合う感じがする」
 お互い顔を見合わせ、頷き合う。
「やっぱり仮想敵を演じるんだから、相手から『見えなかった』とか言い訳されないように、視認性良くないとね」
「確かにそうだ」
「それに格好良くないと。これイイ感じだよね。じゃあ、ミーナに言いに行こう」
「えっ、どう言う事だ?」
「服だよ。この柄に決めたって言わないと」
 腕を引っ張るエーリカに、トゥルーデは疑問をぶつける。
「待て、それはつまり、私とエーリカは飛行教導隊に行くと言う事なのか?」
「決まった訳じゃないよ。でもほら、とりあえず作って501も演習用に使うのも面白いと思わない? いつも同じ服でもねー」
「お前の好みか。……まあ、良いけど」
「二人お揃いの服って良いよね。これで私達無敵だね。相手を片っ端から……」
「エーリカ。お前は教育したいのか遊びたいのかどっちなんだ……」
「ま、とりあえずミーナのとこに行こう、トゥルーデ」
「分かった分かった……」
 悪い気はしないトゥルーデは、ひっついてくるエーリカの肩をそっと抱き寄せ、並んで歩く。
 ふふっと微笑むエーリカは、トゥルーデに身体を預けた。

end



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