鼎談 おっぱい星人編


エイラ「さて、宮藤がその本性を露にしてから、幾度季節は巡っただろうか」

宮藤「え? エイラさん? なに変なナレーション入れてるんですか?」

エイラ「最初は無垢な新人を装い、人畜無害な仔犬を装い、しかしながらその視覚と触覚は常にある特定の部位へと伸びていた。我等が同士ルッキーニよ、オマエはいつからそれに気付いていたか?」

ルッキーニ「あたしは最初から気付いていたよ。最初のミーティングのあとに、エイラが『リーネはおっきかった』って言った瞬間からね」

エイラ「さすがは同士ルッキーニ。仔猫の眼は誤魔化せないんダナ」

ルッキーニ「ホントは豹だけどねん♪」

宮藤「ルッキーニちゃんも……。なんなんですかこの尋問的な空気は」

エイラ「ふふん♪ 私はな、宮藤。同士としてオマエのことが誇らしく思うと同時に、末恐ろしくも思うのだ。だから今日はオマエに教えてやらねばならない。おっぱい星への道程は果てしなく長いということをっ!」

宮藤「おっぱ…って、え、えええええええぇ! エイラさん!? わ、私、別にそんな……」

ルッキーニ「またそーやって誤魔化そうとするー」

宮藤「ルッキーニちゃん!? べ、別に誤魔化してなんか……」

エイラ「さて、宮藤の弁解はその辺にしておいて。」

宮藤「弁解って、私まだ何も言ってない!」

エイラ「まぁ待て。まずは決定的な証拠VTRをご覧頂こう」

宮藤「って、このスクリーンどこから出てきたの!?」

ルッキーニ「1期、2期は見飽きちゃったからー、最新のヤツいっちゃおー!」

エイラ「ポチッとな」

 カラカラと回り出す映写機。
 夜、ペリーヌの居城の一室。

エイラ「さて、まずはこのシーンだぞ。もうお馴染みだから今更説明はいらないナ。そう、ターゲットはリーネだ」

ルッキーニ「必要以上にくっついちゃってるねー。甘い、甘すぎるよ! 芳リーネ!」

宮藤「こ、これはそのぅ……。私、そんなに寝相がいい方じゃないから……たまたまね。そう! 偶然そうなっちゃっただけで」

エイラ「眠りに落ちてさえ、無意識下でさえ、その手は在るべき場所へと還る。これがっ、宮藤の、固有魔法っ!」

宮藤「ちがいます! そんな都合のいい魔法なんか知りません!」

ルッキーニ「都合のいい? よしかー、それってどういう意味かなー?」

宮藤「い、いやぁ……あはははは、私そんなこと言ったっけ? 空耳じゃないのかなぁ」

エイラ「はぁ……ま、いいダロ。こんなのはいつものことだしサ。さて、お次はこのシーン。ここではなかなか高度なテクが使われているゾ」

 映し出されたのは天城の一室での場面。

 『服部さんっていくつだっけ?』
 『歳ですか? ……』

エイラ「セクハラだな」

ルッキーニ「よしかー、上官だからってこれはないなー」

エイラ「うんうん、セクハラにしてパワハラだな」

宮藤「ええええええええぇ!? なんでですか!? 普通に年齢を訊いただけじゃないですか!」

エイラ「いいや違うな。オマエは年齢を訊ねたのではない! それはオマエの視線がよーく物語っているじゃないか」

 巻き戻る映写機。
 問題の場面を繰り返す。

エイラ「ここだ! ここで宮藤は完璧に服部軍曹の胸を見ている。つまり、宮藤が訊ねたのは年齢がいくつかではなく、バストサイズがいくつかだったんだよ!」

ルッキーニ「な、なんだってー!!!」

宮藤「そそそ、そんなわけないじゃないですかー! 話の流れからも年齢だって明らかでしょう!」

エイラ「ちっちっち。宮藤、私はオマエの本能に問いかけているんだ」

宮藤「わ、私の、本能……?」

エイラ「そうだ。宮藤少尉にではなく、おっぱい星人宮藤芳佳にな!」

宮藤「だ、だから、おっぱい星人って、いったい……」

 唐突にルッキーニが宮藤の胸を掴む。

宮藤「ひゃ……」

ルッキーニ(?)「よしかのなかにいるもうひとりのよしか。ねぇ、きづいているんでしょ?」

 光の失せた瞳でルッキーニは宮藤の心を射抜く。

宮藤「あっ……る、ルッキーニ、ちゃん……あ…あん…そんなに、揉んじゃ、や……んん……」

ルッキーニ(?)「どうしたの? そんなにあかくそまっちゃって。せめられるのにはなれてない?」

 ルッキーニの追及の手は止まらない。
 宮藤に耳と尻尾が現出する。

宮藤「そ…そんなぁ……服の…ん…下から、なんて……だめだよぉ……」

ルッキーニ(?)「ねぇ……」

 徐にルッキーニが宮藤の耳に齧り付く。

宮藤「ひゃん!!?」

 宮藤は大きく身体を震わせて膝を着く。
 その表情は紅に染まり、その声には艶色が灯る。

宮藤「はぁ……みみ…かじったらあぁ……い、いやぁぁぁあ……っん……!」

ルッキーニ(?)「ねぇ、きこえてる? あたしはききたいな。よしかのほんとうのこえを。いつかのゆめがうつした、よしかのよくぼうを。ねぇ、きかせてよ!」

宮藤「あ、あぁ……いや……だ、だめぇぇえええっんんんんんんんっ……!!!!!!!!」

 撃墜された宮藤はそのまま地面にくずおれる。

エイラ「くくく、よくやったガッティーノ。これであとは覚醒を待つのみダナ」

ルッキーニ「うじゅ? ちょっとヤリすぎちゃったかなぁ~。おーい! よしかー!」

エイラ「問題ない。むしろこれくらいでちょうど良い」

ルッキーニ「でも、ピクリとも動かないけど」

エイラ「今、宮藤は探しているんだ。一度崩壊した自己の還るべき場所を」

ルッキーニ「還るべき場所……?」

エイラ「そうだ。劇場版のキャッチコピーにもあったじゃないか。『還りたい胸(ばしょ)がある』と!」

ルッキーニ「なんか違ーう。けどまぁいいかそれで♪」

宮藤「うぅ……わ、わたしは……」

ルッキーニ「あ、起きた」

 よろよろと立ち上がる宮藤。
 次の瞬間、餌に飢えた野獣の如くエイラの胸に飛びかかるが、

エイラ「宮藤、これはとんだ御挨拶じゃないか。それとも握手のつもりかな? 私には悪手でしかないと分かっているだろう?」

 ヒラリと回避されてつんのめりながら着地する。

宮藤(?)「さすがはエイラさん。回避は最大の防御、か。でもエイラさん程度の胸なら未練はないですが」

エイラ「ほほう。言ってくれるじゃないか、宮藤。いや、真・宮藤とでも言うべきかな? やっとその姿を現したか!」

真・宮藤(?)「私は……ようやく思い出しました……その使命を……。そう、私は世界中のおっぱいをこの手中に収めるべく、おっぱい星より遣わされた使者だったことを!」

ルッキーニ「うじゅぁ~、なんか電波入っちゃったよ。だいじょぶかー! よしかー!」

 さっと背後に回ったルッキーニが再び宮藤の胸を鷲掴みにする。

宮藤「きゃ……!?」

ルッキーニ「よしかー、めーさませー!」

宮藤「はっ……あ、あれ? わたし……どうして……」

エイラ「ふん、まぁいいダロ。さて宮藤、話はここからダゾ」

宮藤「え? 話って、なんなんですか、エイラさん?」

エイラ「宮藤、これから正義の話をしよう!」

宮藤「正義の……話?」

エイラ「正義と書いて『おっぱい』と読むんだけどナ」

宮藤「おっぱ…ってまたそう言う……私はただ」

エイラ「私は? なんなんだ?」

宮藤「わ、私は……ただ、ちょっと興味があるだけで。純粋な好奇心というか、憧れというか……」

エイラ「ふむ、そうだな。オマエの視線はいつも大きな胸に向かっているからナ」

宮藤「い、いつもって、そんなこと」

エイラ「ないって、言い切れるのか?」

宮藤「言い切れる、とは言わないけど……」

ルッキーニ「あいまいだな~もう~。だったら、証拠VTRでこれまでのおさらいを」

宮藤「あー! わかった! わかりましたよぉ。見てます! 気になるから見てました! ごめんなさい!」

エイラ「やっと認めたか。だが謝る必要なんかないんダナ。それがオマエの望んだことなら」

ルッキーニ「よしかもおっぱい大好きだもんね」

宮藤「大好きって……まぁ、否定はしないけど」

ルッキーニ「でもシャーリーのはあげないかんね!」

宮藤「うぅ、いいもん、リーネちゃんがいるから」

ルッキーニ「おおー、早くも俺の嫁宣言」

エイラ「なんかもう自棄なんダナ」

宮藤「そういうエイラさんはどうなんですか!? サーニャちゃんとはどうなんですか!?」

エイラ「さ、サーニャか!? な、なんでそこでサーニャが、でで出てくるんだ!?」

ルッキーニ「エイラの弱点を容赦なく突き刺す、よしか、恐るべし」

宮藤「サーニャちゃんはエイラさんが望むような大きさじゃないですよね?」

エイラ「そ、それとこれとは関係ないんダナ。それにおっぱいは大きさだけで語るものじゃないゾ。色や艶、形、いろいろ見て判断するものじゃないか」

宮藤「見るだけでいいんですか?」

エイラ「ヱ?」

宮藤「エイラさんは見るだけでいいんですか? 触らないと分からないこともありますよね?」

エイラ「い、いやぁ~あはははは、そう、だよな~。でも、さ、サーニャのを、触るだなんて……」

宮藤「エイラさんは触ったことないんですか?」

エイラ「だ、だって……サーニャは、サーニャで、サーニャだし……」

宮藤「私は触ったことありますよ? サーニャちゃんの」

エイラ「ふ、ふざけんなコノヤロー!!!!! わ、わたしのサーニャに! わたしの知らないトコで! な、なんてことを!!!」

ルッキーニ「わっ! エイラー、ちょっと抑えて抑えて!」

宮藤「と、まぁこれは冗談ですが」

エイラ「冗談かよ! 全く、タチが悪いぞ全く」

宮藤「ちょっとした仕返しですよ」

エイラ「ぐぬぬ」

ルッキーニ「おーい。話がそれてるぞー。戻ってこーい」

エイラ「おほん! えーっとだな、ルッキーニにとってのシャーリー、宮藤にとってのリーネに相当するようなおっぱい要員は私にもいるぞ」

宮藤「劇場版に出てきましたよね。確か、ニパさんでしたっけ?」

ルッキーニ「いたいた! いやぁ、いいおっぱいだったよねー。セーターにスラーッシュ! GJすぎるよ!」

エイラ「おいおい、ニパをソンナ目で見んナー。あれでも私の親友なんダゾ」

ルッキーニ「でも、よしかじゃなくてもだいたいの視聴者はまずあそこに釘付けになると思うけどねー」

エイラ「まぁ、それは認めるが」

宮藤「ニパさんはエイラさんのスオムス空軍時代の同僚なんですよね。久しぶりの再会だったんじゃないですか?」

エイラ「そんなに長いこと会ってなかったわけでもないぞ。(詳しくはキミ空を読んでくれ!)。でもそうだなー、また見ない間に結構成長していてだな」

宮藤「おおー!」

ルッキーニ「今度502に行くときはあたしも連れてってー!」

エイラ「シャーリーと交換なら考えないでもないぞ」

ルッキーニ「うぇー……」

宮藤「だったら私はリーネちゃんを生贄にニパさんを召喚」

エイラ「鬼畜だなオマエ。見境ないのは地獄逝きダゾ」

宮藤「でもエイラさんにはサーニャちゃんがいてニパさんまでいるなんて、ハーレムじゃないですか!」

エイラ「宮藤だってリーネがいるならペリーヌもついてくるんじゃないか?」

宮藤「ペタンコ? な、なんですか?」

エイラ「オマエ……雷に撃たれて死ぬタイプだな。気を付けた方がいいぞ」

宮藤「あ、そうですか。気を付けます」

ルッキーニ「よしかはホントに大きいおっぱいに目がないね」

宮藤「それはもう大きいことはいいことだよね」

エイラ「ほう、宮藤は大きければいいんだな。そうかそうか」

宮藤「それは違いますよ、エイラさん。論理のすり替えです。私は“大きいことはいいこと”だと言っているだけで、“大きければいい”とは一言も言ってません!」

エイラ「そうか、じゃあ大きさはいらないんだな」

宮藤「大きくなければ乳に非ずっ!!!」

エイラ「出たな! おっぱい大魔神!」

宮藤「なんかさらに酷いことになってる!? っていうか勝手に私の発言を捻じ曲げないで下さいよー!」

ルッキーニ「よしかも充分言ってることハチャメチャだけどねー」

宮藤「うぅ、なんかルッキーニちゃんに言われるとショック……」

ルッキーニ「ああー! 今、私の胸を見て言ったでしょー!」

エイラ「確かにルッキーニの胸はショッキングだが」

ルッキーニ「だーかーらー、いつも言ってるでしょ。あたしはこれからなの! こ れ か ら !」

エイラ「ま、妄想は自由だからナ」

ルッキーニ「うじゅー、信じてないなー」

宮藤「でもルッキーニちゃんは年齢的にも本当にこれからだから期待できると思いますよ」

ルッキーニ「さすがよしか! わかってる!」

エイラ「そう言う宮藤はどうなんだ? 宮藤も自分のはなかなか残念賞じゃないか」

宮藤「残念とか失礼じゃないですか! ルッキーニちゃんよりはありますよ!」

ルッキーニ「コラコラ。よしかも失礼だぞー」

宮藤「あぁ、ごめんねルッキーニちゃん」

ルッキーニ「でも、よしかは自分の胸がリーネみたいに大きくなったらいいなぁとか思ってないの?」

 ルッキーニのさりげない疑問に、宮藤は自らの胸に手を当てて考える。

宮藤「うーん、どうだろう。そりゃ、自分の胸が小さいのにはちょっと劣等感あるけど……。でも私は自分の胸より誰かの胸を、守りたいから……」

ルッキーニ「おおー! ついに!」

エイラ「宮藤の隠された本音がっ!」

宮藤「えへへー、なんか照れちゃいますね」

エイラ「まさか、宮藤がこれほどまでだったとは。私はどうやら侮っていたようだ。宮藤、オマエは今日から、おっぱい星人からレベルアップして、おっぱい聖人だ!」

宮藤「はい!」

ルッキーニ「いやー、いいハナシだなー」

 がっしり握手を交わすエイラと宮藤。
 ルッキーニは目に涙を浮かべて拍手を送っている。

宮藤「……って、よくなーい!!!!! なんなんですかおっぱい聖人って!? そんなヘンテコな称号いらないです!! 確かにさっきはなんか雰囲気に飲まれて変なことを口走ったかもしれないけど、なしです! さっきの全部なし! え? なんですか? 今までの、全部録音してある? ちょ、ふ、ふざけ……テープどこですか!? 全部壊して……あ!? 逃げた! ま、待てええええええええ!!! エイラさん! ルッキーニちゃん!」


   おしまい――。


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