真のウィッチへの道は遠し?
「はぁ……」
「どうしたんダ? ミーナ中佐。手紙見ながら溜息なんかついて」
「もしかして、あたし達の予算が減らされるとか?」
或る日の昼下がり、ミーティングルームで手紙を見て溜息をつくミーナを心配して、エイラとルッキーニが声をかける。
「ううん。そういうわけじゃないんだけど……504のドッリオ少佐にまた、無茶なお願いをされてね」
そう言って、自分が今読んでいた手紙をルッキーニに手渡すミーナ。
エイラとお茶を持ってきた芳佳も手紙の内容が気になり、ルッキーニを囲むように覗き込む。
「ルッキーニちゃん、何て書いてあるの?」
「えっとね……来年のせくしーカレンダー用の写真を各部隊から募集してるみたいで、あたし達からも1枚提供してほしいんだって」
「せくしーカレンダー? そんなものがあるんですか!?」
興味津々そうに身を乗り出す芳佳。
『せくしー』という言葉に釘付けのようだ。
「ええ。元々、前線の戦意高揚のためにドッリオ少佐が企画したものなんだけど、ロマーニャ公に止められてからは彼女が趣味で
色々撮ってるの。この前、挨拶に行った時もトゥルーデとエーリカがバニーガールの衣装を着せられたりして、大変だったわ」
「あたしとシャーリーがこないだまで504にいた時も、色んな服着せられたよ。『これも任務の一環』だからとか言われて」
ミーナとルッキーニから、カレンダーの全容を聞いた芳佳の目がみるみるうちに輝きだす。
その表情はまるで、獲物を狙う肉食獣のようだ。
「それは素晴らしい企画ですね。ミーナ中佐! その写真の撮影、私たちに任せてください!
いざとなったら責任は取ります! エイラさんが」
「おい、何で私ナンダヨ」
「だって、エイラさんが私たちの中で1番偉いじゃないですか」
「そーそー。エイラは中尉であたし達は少尉だもん」
芳佳に同調するようにルッキーニも頷く。
「こういう時だけ上官扱いすんナー!」
「まーまー、責任ある立場って凄いことじゃないですか。501のせくしー団長さん♪」
「いよっ! カッコイイよ、せくしー団長!」
エイラを取り囲んで、彼女を囃し立てる芳佳とルッキーニ。
エイラもエイラで、『せくしー団長』と呼ばれて満更でもない様子だ。
「悪い気はしないけど、何か上手く乗せられてる感じがするんダナ……」
「まぁ、私もそこまで手が回らないから、あなた達がやってくれるのならありがたいわ。今回の件は任せるわね」
「はい、お任せください!」
芳佳が元気良く返事をする。こうして、501のせくしー団の写真撮影が始まった。
「さて、誰を撮りましょうか? せくしー団長さん」
「う~ん、やっぱりリーネじゃないカ? シャーリーも捨てがたいな……」
トゥルーデからカメラを借りて、撮影の準備は万端の一同。
今は、基地の廊下で誰を撮るか相談しているところだ。
「ねーねー2人とも、あそこ見て。ターゲットはっけーん!」
ルッキーニが指差した方向に芳佳とエイラが目をやるとそこには、坂本美緒少佐と服部静夏軍曹の姿があった。
静夏の年齢の割りに発達した胸を見て、3人は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「良いところに目をつけたナ、ガッティーノ。確かに新人のスタイルはある意味エース級……」
「静夏ちゃんのせくしーカレンダー……それは良いですね」
と、半分ヨダレを垂らしながらニヤつく芳佳。
「よし、突撃だ。行って来い特攻隊長!」
「はい!」
「すまなかったな、服部。支援物資の運搬を手伝わせてしまって」
「いえ、坂本少佐のお役に立てて嬉しい限りです」
「静夏ちゃーん!」
美緒と静夏の間に割って入るように、飛び込む芳佳。
「み、宮藤さん! 一体どうなさったんですか!?」
「今から、カレンダー用の写真を撮ろうと思ってるんだけど、静夏ちゃん協力してくれないかな?」
「それはつまり、私の写真を撮るということですか?」
「うん。せくしーカレンダーっていうちょっとえっちな写真をね。静夏ちゃんスタイル良いから、いいモデルになると思うんだ」
「い、いけません! 軍人がそんな不埒な写真の撮影など……」
顔を真っ赤にしながら、芳佳のお願いを断る静夏。
しかし芳佳も、断られるのを織り込み済みのようで今度は美緒に何かを耳打ちする。
彼女にも静夏の説得を頼んでいるようだ。
「行ってこい服部、新兵は数多の経験を重ねることで成長し、一人前のウィッチになるものだ」
「そうだよ! 何事も経験だよ、静夏ちゃん」
そう言いながら、静夏の肩を叩く芳佳と美緒。
憧れの上官2人にここまで言われては、断るわけにもいかない。
静夏は覚悟を決め、芳佳の手を取って答える。
「わ、分かりました! 不肖この服部静夏、微力ながら協力させていただきます!」
「うん、ありがとう。それじゃ、行こっか」
静夏の手を引っ張って、基地のゲストルームへ連れて行く芳佳。
そこではすでにルッキーニとエイラが撮影の準備をしていた。
「おお、よく来てくれたナ、新人」
「早速だけど、それ脱いだ脱いだー!」
「きゃあっ!」
ゲストルームに入るや否や、いきなりルッキーニに上着を脱がされる静夏。
彼女が身に付けているものはボディスーツのみとなる。
「手際がいいナ、さすがせくしー団の技術長」
「へへ~ん、あたしにかかればこれくらいどうってことないよー!」
「ル、ルッキーニ少尉! いきなり何をするんですか!」
「せくしーカレンダーの撮影なんだから、格好もせくしーじゃないと。ほら、こっちも脱いだ脱いだー!」
次にルッキーニはボディスーツに手をかけ、あっという間に静夏を生まれたままの姿にする。
「うぅっ、ひ、ひどいです……」
「ごめんね、静夏ちゃん。ちょっとの辛抱だから。次はこれに着替えて」
そう言って芳佳が持ってきたのは、白の水着。
露出度が高めの、上下に分かれたタイプの水着だ。
「静夏ちゃんはさあ、こういう水着も似合うと思うよ~」
(どうしてサイズぴったりなんだろう……)
後ろに回って、芳佳は水着のトップスを装着させていく。
静夏は、芳佳が持ってきた水着が自分にぴったりなサイズであることに疑問を覚える。
「静夏ちゃんのって、やっぱり大きいな~」
「ひゃぁっ!?」
どさくさに紛れて水着の中に手を入れ、静夏の胸をそっと触る芳佳。
それを見ていたルッキーニも芳佳に負けじと静夏の胸を揉みしだく。
「芳佳ばっかりずる~い! あたしも静夏のおっぱい触る~」
「きゃっ! ルッキーニ少尉、そ、そんなとこっ」
「フフ、じゃあ私はお尻のほうを……ほほう、こっちも中々……」
水着のボトムスを穿かせながら、静夏のお尻を揉んでいくエイラ。
「やぁっ……ダ、ダメですユーティライネン中尉……あぅっ」
「そんな事言われたら、もっと触りたくなるナ……って、いけない。あやうく当初の目的を忘れるとこだった」
「そうだよ。あたし達の目的は、静夏のせくしー写真を撮ることだよ」
「静夏ちゃんがあまりにも可愛い声出すから、忘れちゃってたね」
数分後、当初の目的を思い出した3人は静夏を解放して、写真の撮影に撮りかかる。
3人に散々揉みくちゃにされた静夏は、抵抗する気にもなれず、好き勝手に写真を撮られていた。
「もう、煮るなり焼くなり好きにしてください……」
「おお、潔いナ新人。それじゃあ、もうちょっと前屈みになってくれ」
「そうだなー、その上でもっとせくしーなポーズ、取ってくれない?」
「いいね、そのポーズ。素晴らしいよ静夏ちゃん!」
静夏のせくしーな姿を次々写真に収めていく芳佳たち。
一通り写真を撮り終わった後で、ルッキーニが疑問に思ったことを口にする。
「ねぇ、水着の写真をこんな部屋で撮るのって変じゃない?」
「言われてみればそうだね……ビーチまで行ってみる?」
「おお、それは名案ダナ」
「え? そ、外で撮影するんですか?」
「うん。そのつもりだけど……どうかしたの?」
「あの、さすがにこの水着で外に出るのは、は、恥ずかしいです……」
「耐えろ新人。その羞恥心を乗り越えた先に、お前の目指す理想のウィッチへの道が続いているんダ」
「この試練を乗り越えれば、あたし達みたいに飛べるようになるよ。ほら、行こっ」
そう言って静夏の腕をガッチリ掴むエイラとルッキーニ。
彼女を半ば強制的に、外へ連れて行くつもりのようだ。
(一人前のウィッチになる事が、こんなに大変な事だったなんて……お父様、真のウィッチへの道のりはまだまだ険しそうです……)
エイラとルッキーニに引っ張られながら、故郷の父親を想う静夏。
彼女の苦難はこれからもまだまだ、続きそうである……
~Fin~