sandwich


 それは、部屋のベッドに座り、純文学をぼんやり読んでいる時の事だった。
「管野さんみーつけた!」
 僅かに開いていた隙間から姿を見たのか、ひかりが唐突に入って来た。
「何だよひかり。ノック位しろ」
「横に座っちゃいます」
「いきなり何だよ」
「じゃじゃーん、そこに私」
「孝美! お前まで何しに来た?」
 仰天する直枝。
「横に座ります」
 当然とばかりに密着するかたちで座る二人。
「ちょ、ちょっと、お前ら一体何なんだよ。落ち着かねえよ」
 ひかりは直枝に単刀直入に聞いた。
「管野さんは、私とお姉ちゃん、どっちが良いんですか?」
「はあ!? 何だいきなり?」
「そうね。私も気になるわ」
「孝美まで何言い出すんだ!?」
「管野さん、私をずっと気に掛けててくれて、お手紙も頂いたし」
「あー、いいなあお姉ちゃん」
「あ、あれはその……」
「でも、私は管野さんに、先に『相棒』って言って貰ったもん!」
「あ、あれは、違っ、違うってば!」
「あら、私も一度は言われたわ。管野さんも前から、そのつもり、だったんでしょう?」
「ちょ、ちょっ、お前ら、近い近い近い!」
 二人に挟まれてぐいぐい押される。
「じゃあ、管野さんを賭けてお姉ちゃん、勝負しよう」
「望む所よひかり。どちらが先に管野さんの弱点を探せるか」
 二人は目を合わせて不敵に笑うと、直枝のマフラーを外し、服のボタンを外していく。
「お前ら止めろ! 意味分かんねえ!」
 孝美は突然、目の色を変えた。髪の色がみるみる変わっていく。直枝は仰天した。
「何で絶対魔眼使ってるんだよこんな時に!」
「管野さんの弱点は、耳!」
「ちょ! ……ってひかり、何触ってるんだ」
「私、接触魔眼で、弱点が分かるんです。管野さんの弱点は耳たぶの付け根!」
「負けないわよ~ひかり」
「私だってお姉ちゃんに負けないんだから」
「うひゃ……んあっ……やめ、やめろ二人共……ああっ……やめ……やめ……て……」

 僅かに開いたままの直枝の部屋を窺うウィッチ達の影があった。
「うーんなるほど。魔眼にもああ言う使い方があるのか」
「何感心してるのよ、エロ伯爵」
「さて、頃合いを見計らって僕も三人に混ぜて貰おうかな……って痛てててて! 先生痛い痛い痛い!」
「貴方には更なる懲罰が必要ね。こっちに来なさい」
「サーシャさん、その、ワタシ、ああ言うコト、しないから……なんでそんな目で見るの?」
「いえ。何でも……」
「定ちゃん、さっきからなんでぎゅっとしてくるの?」
「何となく……ジョゼの髪、良い匂い」

 夕食の時間。
「あら、孝美さんもひかりさんも、随分肌の色が良くなったわね」
「はい。お姉ちゃんと勝負しましたから」
「なかなか楽しかったわ。ねえ、管野さん?」
 雁淵姉妹はとても嬉しそう。一方の直枝は魂を抜かれた如く、げっそりとしていた。
「もう、鼻血も出ねえ……」

「姉妹揃って、元気な事だ」
 ラルはそんな一同を後目に、書類の束を抱えて執務室へ戻った。

end


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