RtB


「トゥルーデ、ねえトゥルーデってば」
「何だハルトマン。騒がしい」
「私達、10周年なんだって」
「何を言っている? 今は戦いの最中じゃないか。訳の分からない事を言うな」
「えー。でも記念に」
「何の記念だか分からん。ともかく、準備しろ。出撃だぞ」
「はいはい。それでこそいつものトゥルーデだよね」
「それは嫌味か?」
 二人揃って武器を手に取り、ストライカーユニットを履き、滑走路から離陸する。飛行しつつ司令部と通信を取るトゥルーデ。
「ああ、問題無い。飛行コースは進路1-7-0、高度は指示通り3000を維持。まだ敵は見えない」
「ねえトゥルーデ」
「今度は何だハルトマン」
「はいこれ」
 渡されたのは、綺麗にデコレーションされた花束。
「何でこのタイミングにそんなものを」
「サプライズ~」
 手渡された花束を見、首を傾げた後、はあとため息を付くトゥルーデ。
「別の意味で驚いたぞ。戦いに不要なモノを何故持って……」
「ねえトゥルーデ」
「何だ」
「本当に、驚いてくれないの?」
「驚くも何も」
「ほら?」
「え?」
 トゥルーデはエーリカが指し示す方向を見た。指示された会敵予想時間ぴったりに、ネウロイ……ではなく、大量の花束と、花びらが風に舞って二人を包む。
「な、何だこれは? 新手の攻撃か?」
「分かってないなあ、トゥルーデ」
「分かってって、何の事だ?」
 エーリカはMG42を背負ったまま、トゥルーデに抱きついた。服を通してほのかに感じる温かみ。エーリカは、愛しの人を抱きしめると、そっと頬に唇を当てた。


 はっ、と目が覚めるトゥルーデ。
 そう言えば、今日は非番だからと、エーリカに付き合わされて部屋の掃除をしていた事を思い出す。
 マイペースな相棒に惑わされているうちに、らしくなく、疲れてしまいベッドに寝転びウトウトしていた様だった。
「あれは……夢?」
 仰向けになったまま、ぼそっと呟く。
「夢って、何の事?」
 横で一緒にうたた寝していたエーリカが、悪戯っぽく笑う。
「いや……何か変な夢を見ていた」
「どんな?」
「何て言えば良いのか……。まあ、それよりも、やる事が」
「そうだよね。トゥルーデ分かってるじゃん」
 と言ってエーリカが渡したのは、少し小さめの花束。夢に出て来た花と全く一緒だった。思わず声を失うトゥルーデ。
「な、何でこれを」
「トゥルーデ、喜ぶかなと思って」
「今日は、何かの記念日だったか?」
「さて、どうでしょう?」
 そう言って、意味ありげに笑うエーリカ。そっとトゥルーデを抱きしめる。
 トゥルーデは花束を見、次に最愛のひとを見た。
 片付けの最中だった筈の部屋は、いつの間にか、花びらでいっぱいになっていた。夢で見たあの色、あのかたち、あの匂い。
 ……まさか。
「トゥルーデ?」
「これは、……いや、まさかこれも夢か?」
「面白い事言うね、トゥルーデ。片付けしてたら、窓から花びらが舞い込んで来たんだよ」
「そんな事が有るか。しかし……いや、これは一体」
 エーリカは意味深な笑みを浮かべ、トゥルーデに抱きついた。相棒の体温を感じる。
「きょとんとしてるトゥルーデ、かわいい」
 エーリカはそう言うと、そっとトゥルーデの唇を塞いだ。
 愛しの人を前に、そっと抱き返し、感触を脳裏に刻み込む。
 余韻に浸る二人。抱き合い、鼓動を感じる。
 そこで、トゥルーデは花束からはらりと落ちた紙切れを見つけ、手に取る。折り畳まれたそれは、極秘の作戦指示書だった。書かれた内容と地名を見て、仰天した。その都市とは……

end



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