her very particular


「トゥルーデは細か過ぎるんだよ~」
「いーや。こうでないとダメだ。妹のクリスもそう言っている」
「トゥルーデが圧かけてたんじゃないの?」
 むっとした表情を向ける堅物大尉。ここは基地の厨房、目の前にあるのはぐつぐつ煮える大鍋、中には大量の芋が茹でられていた。
「バルクホルンさん、ハルトマンさん、どうしたんですか?」
 料理当番の割烹着姿の芳佳がただならぬ雰囲気を察して様子を見に来た。エプロン姿のリーネも心配そう。
「宮藤からも言ってやってよ。芋茹でる時間、適当で構わないって言ってるのにさー」
「だ・か・ら。この品種の芋は固めだから茹で時間が十二分、大きさが大ぶりだから更に一分位は--」
「それがこだわり過ぎなんだってば」
 カールスラントのエース同士の会話に、扶桑女子の芳佳は何と答えて良いか言葉に詰まる。
「ほらぁ、宮藤も困ってるじゃん」
「いやいや、宮藤を困らせるつもりは無いぞ。だから茹で時間が」
 慌てて取り繕う501の“お姉ちゃん”を前に、くすっと笑って話す芳佳。
「そうですねぇ。扶桑にはカールスラント程お芋の種類が無いので分からないですけど……お料理によって下ごしらえの時間を変えたりしますね」
「確かに、それもあるな」
「あとは大きさですかね。火の通りが」
「だろう? それをハルトマンに言っているのだが適当で良いと適当な事を言うから」
「食べられれば何でも良いってー」
 またもトゥルーデとエーリカの言い合いになりかけたので、リーネが根本的な問い掛けを発する。
「あの、バルクホルン大尉はどうして茹で方にこだわるんですか?」
「カールスラントの女子たるもの、芋でフルコースが作れないと嫁に行けないと言う位芋にはこだわりがある……ああその話では無かったな。つまりしっかりこだわらないと良い料理が出来ないと言う事だ」
「私はそんなにこだわらなくて良いって言ってるのに。大変じゃん」
 熱弁するトゥルーデ、呆れるエーリカ。そんな二人を見て、芳佳とリーネは顔を見合わせて、うんうんと頷くと微笑んだ。
「な、何がおかしい二人共」
 動揺するトゥルーデを前に、芳佳が言った。
「バルクホルンさんはハルトマンさんに、美味しい料理を食べてもらいたいって事ですよね」
「ああ」
 エーリカには、リーネが言った。
「ハルトマン中尉は、バルクホルン大尉に苦労して欲しくないって事ですよね」
「うん」
 芳佳が二人を見て話し掛ける。
「それだけお互いの事を思ってるって事じゃないですか? 流石ですよ」
 ずばりと言い当てられ、顔が赤くなるトゥルーデ。冷静を装って口笛を吹くエーリカ。
「ま、まあ、そう言われると」
 動揺を隠せない堅物大尉。
「そこまで深読みされてもね~」
 悪戯っぽく笑って誤魔化すエーリカ。
「そうだよね、芳佳ちゃん」
「リーネちゃんもそう思うよね?」
「うん!」
「二人共止めてくれそう言うのは」
 そう言って苦笑いするトゥルーデ、ぽんぽんと相棒の肩を叩いてニヤニヤするエーリカ。
 ピリピリした雰囲気も何処へやら、厨房の中は鍋から立ち上る湯気と共に、ほんわかとした優しい空気に包まれる。そんな昼食前のひととき。

end



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