let's be a family


「バルクホルンさん、お手紙ですよ」
 芳佳から渡されたその封筒は大分しおれていたが表面にしっかり付いていた軍の「検閲済」のスタンプを見て仕事はしているのだなと変な所で感心するトゥルーデ。
 ちょうど休憩時間なのでお茶とお菓子を楽しむ以外にする事も無いので、トゥルーデは手紙を読む事とした。
「なになに? 誰から?」
 興味深そうにエーリカが横から覗き込む。
「こらこら、読めないだろうに」
 金髪の天使の頭をぐいと押しやる。
「おーいバルクホルン、休憩終わったら次の任務だけど復旧工事の支援と上空の哨戒どっちがいい?」
 渡されたメモを見てシャーリーが声を掛けてきた。先日ベルリン奪還を完了したとは言え、街の復旧も、またいつ湧き出すか分からないネウロイへの備えもどちらも大切な事だった。が、トゥルーデはつい封筒に気を取られシャーリーに丸投げした。
「どっちでも良い」
「なら復旧工事の支援頼むわ。お前肉体労働向きだもんな」
「何だと」
 横目で睨む。それを見たリベリアンは笑って手を振るとルッキーニの元へ行った。
 さて誰からだろうかと封筒を改めて見ると、何と親戚からだった。長らく音信不通で生きているかも定かでは無かったので、その突然な知らせに嬉しさと戸惑いが混ざる。
「どうしたのトゥルーデ。すっごく面白い顔してる」
 エーリカが顔をぐいぐい近付けてくる。
「人の顔をじろじろ見るんじゃ無い」
「違うよ、じーっと見てるんだよ」
「どっちにしろそんなに見なくて良いから」
 トゥルーデは早速本文を読んだ。親戚からは先日のベルリン奪還のニュースでトゥルーデがカールスラントに居るのを知った事、自分達は何とか避難出来て無事である事等が簡潔に書かれていたが、最後に年上の親戚が先日結婚した事が短く書かれていた。
「なるほど。これは色々とめでたい事ばかりだな。今がもっと平和だったら祝杯を上げたいところだ」
「へ~。トゥルーデの従姉妹、結婚したんだ」
 いつの間にかトゥルーデの懐に潜り込んでいたエーリカはちゃっかり手紙を読み終わっていた。
「ハルトマン、盗み読みは良くないぞ」
「良いじゃん、おめでたい事は皆で祝わないと」
「いや、これはあくまで個人的な事だし皆でと言う訳には」
「婚約は私達の方が先だと思うんだけどな。何処で差が付いたのかな」
 ちょっと悔しそうなエーリカ。
「そう言う問題じゃない」
 たしなめるトゥルーデ。
「じゃあさ」
 エーリカはトゥルーデの瞳を真正面から見て言った。
「私達も、すぐ、しようよ」
「え、な、な、何ぃ?」
 動揺を隠せない堅物軍人。
 エーリカはトゥルーデの指に輝く指輪を指して、自分のも見せた。そうして改めて問い掛ける。
「これ見ても分からない?」
「あ、いや、それは分かる、分かるんだが……、でも今すぐは無理だろう」
「そう。今すぐじゃないけどそれは一秒先かも知れないし一分後かも知れないし一時間後かも知れないよ?」
「事故みたいに言うな」
「ま、今のままでも良いけどさ」
 そう言うと黙り込んでふいと背を向けた愛しの人を見、何て言葉をかけて良いか分からず……そっと肩に腕を回す。
「全く、これだから」
 ぼそぼそと文句を言いつつ、まんざらでも無いエーリカ。
 そんないつも通りの二人を見、501の隊員達は日常風景のひとつとばかりに皆めいめいに休憩を楽しんでいた。

 その日の夜遅く、トゥルーデは机に向かって手紙の返信を書いた。お互い無事で何よりと言う事、いつか再会出来たらとの話題、そして最後に結婚おめでとう、末永くお幸せにと伝えて欲しい、と結んだ。
 さて、カールスラントの一部には平和が戻り、親戚達も慶事があった。一方で自分達はどうなるんだろうか。ふう、と大きく息を付くと、横のベッドで寝息を立てる相棒をちらっと見た後、自分の指にある指輪を改めてまじまじと見た。
 一片の曇りも無いその輝きはいつ見てもいいものだが、今日ばかりは、トゥルーデのもやもやした問いには何も答えてくれなかった。

end



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