√05「かまいたちの夜」
私は溢れ出るリビドーを押さえ込んだ。
ちょっと待て私、先程の誓いをもう忘れるなよ!私は呼吸を整える。
そしてリーネは現れた。
「うわわぁリーネ!誤解ダ、未遂ダ、マダ何もしてないからナ!」
「そんな……エイラさんが犯人だったなんて……」
「エ?犯人?」
~談話室~
リーネからの知らせを受け私達が談話室に向うと他のみんなも集まっていた。上級士官は不在で、その場を指揮していたのはシャーリー大尉だった。
「全員集まったな、じゃあ確認している状況を率直に述べる」
いつになく険しい表情のシャーリー大尉から語られた内容は以下の事だった。
・ミーナ隊長が首から血を流し作戦室内で倒れていた事。
・事件当時の目撃者も痕跡もなく原因は不明である事。
・第一発見者はルッキーニで、私と宮藤がキッチンにいた時刻である事。
・危篤状態の為、坂本少佐とバルクホルン大尉が病室へと運び、現在付き添っている事。
・追って連絡があるまで待機命令である、以上の事だった。
そしてハルトマンの一言が重い沈黙を破った。
「もしかしてさ……この中に犯人がいるんじゃない?」
全員が顔を見合わせる。
考えてもいなかった、この中の誰かが犯人だなんて。
私は宮藤と一緒だったから一応アリバイがある、だけど他のみんなの行動については不明だ。
「わたくしは嫌ですわ!この中に殺人犯が潜んでいるかも知れないのに、そんな方々と一夜を共にするなんて!自分の部屋に帰ります!」
「取り乱すなペリーヌ、命令違反だぞ」
シャーリー大尉の制止を振り払い、ペリーヌは自室へと消えていった。
それから犯人捜しの流れとなるのは当然の事だった。
この中の誰かが怪しいとなると、まず疑いが向けられたのは第一発見者のルッキーニだ。
「あたしじゃないよ!あたしじゃないかんね!」
ルッキーニはお仕置きを受ける為に作戦室に向ったらしい。
夕食当番をさぼった事が理由だ、確かにキッチンには夕食の準備がされていなかった。
朝食を手伝ったからすっかり忘れていたなどと言い訳が続くと、責任を感じたのかリーネが口を開く。
「カマイタチです、カマイタチの仕業なんですきっと」
「リーネちゃんかまいたちって両腕が鎌のお化けの事?」
宮藤はリーネ以上に意味不明な言動で返した。
「いいえお化けとかじゃなくて、カマイタチってたぶん真空の刃物が……」
サーニャが語るとみんなの視線がハルトマンに集まる、風使いの魔女だからだ。
「わ、わたし~!?なんでさ~シュトルムは人殺しの道具なんかじゃないって~」
「そういえば……聞いた事がある!」
『知っているのか?シャーリー!』
「ああカマイタチは真空の刃、それ故その傷口から出血はしない、つまりこいつはシロだ」
ゲェェェーッ流石はリベリオンの魔女、無駄に博識だ。ただのおっぱい超人なんかじゃなかった。
今日のシャーリー大尉は頼もしい、普段は楽天家だけど責任を負う立場になれば毅然とするタイプだったんだ。
結局犯人捜しは中断された。
これ以上続けたら疑心暗鬼によりお互いの身を滅ぼすとのシャーリー大尉の意向によるものだ。
無意味な不安は消し去り、仲間を信頼して各自の寝室で休養を取るという結論に達した。
傷付け合って疲れきっていた全員がこの結論に納得した。
~サーニャの寝室前~
ミーナ隊長の治療を行なうため病室へと向った宮藤を除き、私達は自室へと引き返す。私はサーニャを部屋へと送ると扉の前で立ち止まった。
「サーニャ、あのナ……なっなんでもナイ、じゃあ良い夢ヲ」
「うん……エイラもね、おやすみなさい」
おやすみ……、そう応える前にサーニャは自室に消えていった。
なぜ私の部屋で一緒に寝ようと言えないのか。わかっているよ、私がヘタレだからだろ。
現に今も「やっぱりエイラと一緒にいたいの」なんてサーニャが飛び出して来る事を期待しているんだから。
扉の向うからサーニャが飛び出して来る様子は感じられない。私は自室へと引き返した。
~自室~
ベッドに向う私を迎えてくれたのはタロットカード達だった、今朝の状態のままだ。
ベットの上に横たわった【死神】のカードにはドクロが描かれている。その漆黒の瞳が私を見つめていた。
占いは当った、これはミーナ隊長の事を暗示していたんだ。だけど待てよ、このカード正位置だったっけ?逆位置だったっけ?
私は記憶を辿る、確かカードは……
★正位置だったんダナ。
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★逆位置だったんダナ。
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