√15「マルガリータとボロネーゼ」
私は一目散にサーニャの行方を追った。
廊下は静寂と暗闇に包まれていた。
いったい何処へ行ったというんだサーニャは。
あぁ可愛そうなサーニャ。きっと暗闇の中一人で怯えてるに違いないんだ。
なんとしても、なんとしても私がサーニャを守るんだ。
私は闇雲に廊下を駆けずり回った。
《キャァァァー》
静寂が打ち消される。誰かの悲鳴、この声は……ペリーヌだ。
私はドアを蹴破りペリーヌの寝室へと突入した。
~ペリーヌの寝室~
寝室の中では家具は散らかり、ペリーヌと何者かがもみ合っていた。長い髪の女、その制服はミーナ隊長なのか。
「ペリーヌ無事カ?」
「エイラさん……早く逃げ……」
ペリーヌ!ペリーヌはそう言い残すと首から血を流しその場にうなだれた。
ミーナ隊長は視線を私に向けるとこう問い質して来た。
「マルガリータとボロネーゼ、あなたはどちらがお好き?」
「隊長何をわけのわからないコトヲ、そんな事より何をしてるンダ、何故あなたがココにイル?」
「ふっふっふ、エイラさんあなたも‘まだ’のようね。早く‘こちら’にいらっしゃい」
そう言いながら私の方へと歩み寄って来る。
明らかに言動がおかしい、いやおかしいのは言動だけじゃなかった。
ミーナ隊長の赤毛は銀色へと染めあがり、その両目は赤く輝いていた。その変貌に怯えている最中、リーネとサーニャが部屋へと駆け付けた。
「何があったんですかエイラさん」
「わからない、わからないケド犯人はミーナ隊長だったんダ」
当然リーネは目の前の光景を前に困惑する、私だって状況を判断しきれていないのだから。
被害者自身が犯人など推理小説ではよくある事だけど、現実に起きてもそう納得出来る物でもなかった。
「エイラ……あのね……」
サーニャが私に話かけて来る。リーネと一緒にやって来た事を私が誤解してると気をつかってくれてるんだろうな。
だけど私もそんなに馬鹿じゃないよ、このままじゃ私達の身も危ないんだ。
「ここから逃げなきゃナ、早くみんなに知らせないとナ」
「う、うん……」
目前にはミーナ隊長が迫り来る。
そしてミーナ隊長の動きが止まった。ペリーヌだペリーヌが最後の力を振り絞ってミーナ隊長の足にしがみ付いていた。
ペリーヌ……
~廊下~
ペリーヌの寝室から飛び出すと今度は宮藤とバルクホルン大尉に出くわした。
おもむろに宮藤がリーネに問い質す。
「ねぇリーネちゃん、リーネちゃんはマルガリータとボロネーゼどっちが好き?」
「私はマルガリータが好きかな、でもどっどうしたの芳佳ちゃん?いったい急にそんな事聞いてきて」
「やっふふ~、リーネちゃんは‘まだ’なんだね。リーネちゃんも早く‘こっち’においでよ」
そう言い放つと宮藤の髪が銀色に染まり目は赤く輝き出す。次の瞬間、宮藤はリーネに飛び付きその首元に噛み付いた。
うなだれたリーネを余所に今度はバルクホルン大尉が私に問い掛ける。
「クックック、さぁ早くエイラおまえも我が妹となれ!マルガリータとボロネーゼどっちが好きだ!?」
私は……
★ボロネーゼが好きなんダナ。
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★トマトジュースが好きなんダナ。
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