√18「チャイルドユニバース」
私達はシャーリー大尉の解説を聞いた。
~平行世界と平行宇宙~
「みんなもあの時、こうしとけば良かったな~って経験あるだろ?」
『あるある!』
「幼稚園の時ベスじゃなくてステフと付き合っとけばとか、小学校の時イライザじゃなくイボンヌと付き合っとけばとかそーゆー経験」
『ねーよ!』
「まあとにかくあたし達は人生の中でいろんな選択をして、それは樹系図の様に広かっていく」
「朝ご飯にトマトを食べたか、じゃがいもを食べたかとか?」
「キスしたか、キスしなかったかとか?」
「そう今日あたしは朝じゃがいもを食べ、その後ルッキーニとキスしたんだけど……」
『したのか!いつのまに!』
「例え話だ、で朝トマトを食べてキスはしなかった隣の隣の私の世界もあるわけ、これがパラレルワールド」
うん、それはなんとなくわかる。
「だからサ、ワタシは朝食にトマトを食べた隣の世界から来たんダロ?」
「それは違うんだよ、隊長の言う様にパラレルワールド間の移動は無理なんだ」
『結局出来ないのか!』
「ああどっちのエイラも同位体のエイラだからな、この物理的な壁を突破する方法はないんだ」
ここはパラレルワールドではないらしい。
仮にパラレルワールドであったとしても、それを認識する事は出来ない。
認識出来なければそれは本人にとっての本来の世界となる。
よってパラレルワールド間の移動は出来ないとの事だ。
「チョット!じゃワタシは何者なンダヨ!」
「ん~わかり易く言えば……宇宙人だな」
『宇宙人!』
「ほら~わたしの言った通りじゃんか~」
「結論から言うと別の宇宙、こことよく似た世界からやって来たエイラって事になるな」
『こことよく似た世界ってどこだ!』
~超弦理論と超お姉ちゃん理論~
「パラレルワールド間の壁は魔法力でも超えられないけどさ時空の壁なら超えられるわけよ」
『時空?』
「多くの星が宇宙に浮かんでいる様にさ、多くの宇宙という空間世界は時空に浮かんでるわけ」
『それで』
「時空の壁を超えたら別の宇宙空間つまり別の世界へ行ける、でエイラを別世界に飛ばした原因をつくったのは……」
『つくったのは?』
「姉貴の仕業って事さ」
『お姉ちゃんが原因!』
「チョット待ッタ!姉貴ッテお姉ちゃんッテもしかしてバルクホルン大尉の事……ダヨナ?」
「姉貴と言えば姉貴に決まっているだろ?」
「やっぱりトゥルーデ姉ちゃんと呼んでくれないんだなエイラ……お姉ちゃんは悲しいぞ」
間違いない、ここはパラレルワールドなんかじゃなくて……お姉ちゃんワールドだ……
「真空のゆらぎが……相転移で……インフレーションが……トンネル効果で……」
『うおぉ~!』
「10次元にもう一つの次元を加えた11次元が最も美しい数式で」
『へぇ~!』
シャーリー大尉は時空理論について解説を続けていたけど、私は何一つ聞いていない。
いいや、聞きたくても私は聞けなかった。
「心のトキメキが……相思相愛で……ジェネレーションが……年の差効果で……」
「ウギャー!」
「10人の妹に一人のお姉ちゃんを加えた11人姉妹が最も美しい愛の形で」
「ウェ~!」
私はバルクホルン大尉の個人授業を受けていた。
サーニャと恋人同士になれたのは嬉しいけどさ……
やっぱりやだよこんな世界、早くお家に帰りたい。
「いいかげんにして下さい姉さま!エイラが嫌がってます」
「サーニャ!妹同士の結婚なんて、お姉ちゃんは、お姉ちゃんは絶対認めないんだからな!」
サーニャとバルクホルン大尉は口喧嘩を始めた。
助かった……お姉ちゃん地獄から解放してくれたのは愛しのサーニャだった。
でもさ妹同士も姉妹なんだからさ、お姉ちゃんと妹の結婚ももちろん駄目って事気付いて……ないな。
サーニャがバルクホルン大尉の相手をしてくれている隙にシャーリー大尉からから聞いた話をまとめるとこんな感じだった。
・墜落した私とペリーヌをバルクホルン大尉が受け止めた時が事の始まりだった。
・その時バルクホルン大尉は魔法力で多大な重力を発生させた。
・私達の位置エネルギーと多大な重力の衝突は行き場を失い、ポテンシャル障壁を乗り越え空間から時空へと流れだす。
・時空に流れ出たエネルギーは急速に膨張し新たな宇宙、よく似た世界が誕生した。
・重力は時空へと流れだす性質があり余剰に流れ出た重力は時空間に流れ続ける。
私は重力に流され共に空間から時空へと弾き出された。
・電磁気力は時空の壁を超えられないため電磁気力操作能力を持つペリーヌは亀裂への落下を免れた。
・よく似たこの世界でも同様の事が起こっていて、こちらのエイラもあちらの世界に弾き出された。
・私達二人のエイラの整合性を保つために空間と空間は直結し時空間に亀裂を発生させた。
・流れ出る重力により亀裂は拡大を続けているから、時間が経過する度に新たなよく似た世界が誕生する。
・新たなよく似た世界が誕生する度によく似たエイラにも同様の事は起きる。
・その度に時空間の修復作用は働き私は別のよく似た世界へと弾き出される。
・元々の亀裂の原因は私の時空間移動によるものなので、私が時空の亀裂を通過すれば亀裂は塞がり私も元の世界へ帰れる。
……という事らしい。私は頭痛を抑えなんとか理解した。
とすれば亀裂は今も拡大している、もたもたしていれば私は元の世界へ帰れなくなってしまう。手を打つなら早い方が良い。
時空間の亀裂はネウロイと遭遇したポイントに存在する。
私達は……
★時空間の亀裂へと向ったんダナ。
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