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√24「不揃いのカップとお揃いのカップル」


私は部屋を飛び出した。

~パントリー~
パントリーへ向うと朝食当番のペリーヌが後片付けをしている最中だった。

「オハヨーペリーヌ、サーニャはまだ起きてこないノカ?」
「サーニャ?どなたですの、起きてこないのはあなたでしてよ。全くあなたと言いハルトマン中尉と言いお寝坊さんにも程がありましてよ」

ペリーヌはそう言い放つと朝食のプレートを叩きつけてきた。クロックムッシュが宙を舞う。
ダイニングを覗くと人影はなく、外のみんなは朝食を終えた後の様だ。
それにしても朝から御機嫌斜めとは低血圧か?それともアノ日なのか?これ以上怒らせても碌な事がないな。
早く朝食を済ませよう、私は牛乳を注ぐためのマグカップを探す。
……ない、私のマグカップがない。

「ペリーヌ、ワタシのマグカップ知らないカ?トランプ柄の奴ダヨ」
「私のって……エイラさんそんな物持ってらっしゃらないじゃないですの」
「サーニャと一緒に買ったあのマグカップダヨ!」
「だから先程から気になっているんですけどサーニャさんってどなたですの?」
「あぁもういいよ自分で探すからナ」

なんなんだ朝から、嫌味な奴だけど嘘をつくような奴だとは思ってなかったよ。
パントリー中をかき回してみたけどマグカップはみつからなかった。それどころかサーニャのマグカップも見当たらない。

あれ?何で見当たらないんだろう。
あの日一日の出来事は‘ついさっき’経験したかの様にはっきりと記憶が甦って来るのに……
サーニャと二人で買いに行ってお互いにお似合いのカップを選びあったんだ。
本当はペアカップにしたかったんだけど、できなかったんだよな……
あの日の出来事は嘘なんかじゃない!私は記憶を巡らした。

~お買い物の記憶~
私とサーニャは‘馴染みの’雑貨屋にいた。
そして私は目的の場所に直行した。

「サッ、サーニャはこれなんかいいんじゃねーカ」
「あ……うん……かわいい……」

無愛想な表情で私は陳列棚の中から猫の模様の付いた黒いマグカップを選んだ。
‘前々から’目を付けていた物だ。
それはペアカップとして作られた物らしく、その隣には犬の模様の付いたマグカップが並べられていた。

「そ……そうダロ(じゃ~ワタシはこのお揃いのわんこの奴デ♪)」
「じゃあ……エイラは……、……、これなんてどうかな……ダメ?」
「バ、バカヤローどうせ茶飲むだけだロ(サーニャが選んだモノなら)どれだって一緒ダ」

サーニャが私に選んでくれた物はお揃いの犬模様の物ではなくトランプ柄のマグカップだった。
アテは外れたけれど何故だか私はサーニャがそれを選ぶ予感があった。
占い好きの私にお似合いだってサーニャが選んでくれた物なんだ。
それは私にとってこの上なくお揃いのマグカップに違いなかった。

買い物はマグカップだけじゃない。
浮かれた私はカップを選んでくれたお礼にと訳のわからない理由で、サーニャに陶器でできた黒猫のオブジェをプレゼントしたんだ。
浮かれてた?ううん受け取って貰う自信があったんだ。
そしてサーニャはそのお返しにと私に白猫のオブジェをプレゼントしてくれたんだよな。

「なんかあったの?…今日のエイラ……なんか……嬉しそう……」
「そっ、そんなんじゃネーヨ、ほら早く帰るゾ」

そうそう、帰り路にはこんな会話も交したっけな。

~再びパントリー~
……確かに間違いない。
そう、この日はとても幸せな一日だったんだ。
そうだ、猫のオブジェ!猫のオブジェなら間違いなくサーニャの寝室に置いてある。
朝食なんて食べてる場合じゃないんだな、確かめにいかなきゃ。
サーニャも寝室に戻っているかもしれないしさ。

「ペリーヌごちそうサマ、美味かッタ」
「美味ったって……一口も手を付けてないなんて、あんまりじゃないですの!」

ペリーヌの罵声を背にしてパントリーから駆け出すと、その出会い頭にハルトマン中尉とすれ違う。
私は眠そうに欠伸をかくハルトマン中尉に一応質問してみた。

「ここに来る途中サーニャに会わなかったデスカ?」
「何それ?スオムス料理かなんかぁ~?」

駄目だこの人、まだ寝惚けるな……
私はハルトマン中尉をほったらかしにしてサーニャの寝室に向った。

~サーニャの寝室~
ドアをノックしてみたけど返事はなかった。もう出かけたのかな。
ちょっと確認するだけだかんな!誰に聞かせるでもなく呟きながらドアノブを回す。

《ガチャ》
鍵がかかっていない。

「サーニャ、ゴメンもう出かけたノカ?」
私は申し訳なさそうにそう言いながら部屋に入った。
部屋は静まり返っていた。
当りを見回すが人影はない。
いやそれ所の話じゃない、備え付けの家具以外なにもない。
部屋はただがらんとしていた。

いけね、部屋間違えちゃったよ。
私は一旦廊下に出て確認し直す……ここであってる。
もう一度部屋に入ってみたけど、やっぱりその場所に猫のオブジェ所かサーニャの面影は何一つ残ってなかった。

サーニャが……いない!
いったいどういう事なんだ!

【運命のタロットチェック】
今朝のタロット占いでエイラが引いたカードは?

★【ⅩⅥ 塔】逆位置
√29へ
★【ⅩⅦ 星】正位置
√38へ

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