√26「夢のオールスター編」
私が取るべき最良の方法はこれしかない!
「サーニャ!よく見るんダ!これが……ワタシの正体ダ!」
「エイ……ラ?」
サーニャの正体がバンパイアだとわかった以上、こちらも遠慮する必要なんてない。
私は妖力を解放した。私の上着は引き裂かれ背中からは蝙の羽が生えてくる。
これが私の正体、サキュバスとしての本来の姿だ。
これだけは使いたくなかったんだけど仕方ないな。
テンプテーションでサーニャの心を操るしか方法はないんだ。
「サーニャ!ワタシの虜になるんダナ!テンプテーショ……ゲフゥ」
いきなり何者かのドロップキックが飛んで来た。
誰だ?誰だよいったい!邪魔してくれちゃってさ!
「よおっ!なんだおまえ等こんな所にいたのかよ」
「なぁ~んだエイラもあたしたちとおんなじ妖怪だったんだね~」
そこにはルッキーニと、ルッキーニを肩車するシャーリー大尉がいた。
ちょっと待て、あたしたちとおんなじ?
「ッテ事ハ……」
「おっす!あたしサスカッチ!」
「あたしはね~、けっとしーなのぉ~」
そう言うと二人の体に体毛が生えだす。
もふもふしていてちょっとかわいい。
「ナンナンダ!この部隊四人も妖怪が潜んでいたノカ?」
「ちょ~っと待った、四人だけではない!」
バルクホルン大尉と宮藤が現れた。
先程の銀色の髪の毛に加え、次第に二人の体には銀色の体毛が生えだす。
もふもふしていてちょっとかわいい。
「私は誇り高きワーウルフだ」
「実は私、扶桑の妖怪かまいたちなんです」
誇り高き者がイタチなんかと戯れ合うなよ。
あ~宮藤のお尻をクンカクンカし出しちゃった、もはや威厳の欠片もないね。
宮藤も宮藤だ実はとか言っておまえ、さっきさり気なく正体ばらしてただろ。
「芳佳ちゃんが……私以外の人と戯れ合ってるだなんて……シクシク」
「うわぁリーネ!急に現れるナヨ、そして泣くナ」
「仕方ないじゃないですか!だって私バンシーなんですもん」
もしかして……この流れは、すごく嫌な予感がする。ハルトマンがドリブルしながら駆けて来る、ほら言ってる傍からこれだもん。
「わたしグレムリンだよ、悪戯大好き~だからこんな事もしちゃう~」
「ちょっと!わたくしの首はサッカーボールじゃありません!」
「ウワッ!」
「おっエイラ、ナイスヘディングぅ~」
「ウワァ~ごめんペリーヌ条件反射ダ」
「ごめんでは済みませんわ!あ~どなたかお止めになってぇぇぇ~……」
原因不明のストライカーの故障は、ハルトマンおまえの仕業だったんだな。
そしてペリーヌ、こいつはたぶんデュラハンだな。
ペリーヌの生首はどこかへ転がって行って、首なしの体が必死に追い掛けている。
その数秒後ペリーヌの首は坂本少佐に抱かれて帰って来た。
その坂本少佐に外見上の変化はなかった。
「坂本少佐ハ、侍の生霊かなんかなノカ?」
「ん?私か?私は、妖怪女たらしだ」
「流石ですわ!坂本少佐!」
それ妖怪じゃねーよ!
どこが流石なんだよ!
わけわかんねーよ!
「あらあら、みんな楽しそうね私も交ぜて貰えるかしら?」
「じゃあミーナ隊長の正体ッテ?」
「あらエイラさん知りたいの?そんなに知りたいのなら教えてあげるわ、覚悟はよろしいかしら♪」
そう言うとミーナ隊長の銀色に染まった髪の一本一本が蛇へと変容していく。
この姿はゴルゴンか。
「御満足頂けたかしら?うふふ……でもね……この私の最終形態を目撃したからには、生きて帰すわけにはいかないわよ?」
「アレ?ミーナ隊長……目が、笑ってないんダナ……」
「あら~?だから前以て聞いたのに‘覚悟はよろしいかしら’って、お馬鹿さんね」
「チョット!なんでワタシだけ、ミンナだって見て……」
「食らいなさい!ゴルゴン・ア~イ♪」
その赤く輝く両目から不可思議な光線が放たれる。
私の体は石になった……
その石像の周りをみんなが取り囲む。
「うんわ~すんげ~不細工!」
「寧ろ間抜け顔に見えませんか?」
「困ったわね恐怖に怯えた顔が良かったのに、これじゃ失敗作ね」
みんなの声が聞えてくる。
すごい言われようだ、みんな勝手な事言いやがって!
失敗作って、あんたがこんなにしたんだろ!早く戻してよ隊長。
「んでさ、この粗大ゴミどうすんだ」
「邪魔ですわよね」
「ここは一つサーニャに決めて貰うとするか」
助かった!サーニャ!早く助けて!
「で、どうするんだサーニャ?」
「捨てましょう……」
!!!
「ポイってかんじで~?」「はい、ポイって感じで……」
サーニャ!何言ってんだよ!
私だよ、エイラだよ、ゴミじゃないんだよ!助けてよ!
「それでは宮藤手伝ってくれ、おまえはそちら側を頼む」
「こうですね!バルクホルンさん?」
宮藤!そこ胸!胸だって!どさくさに胸触んな!
ひゃん、大尉そこ触っちゃダメっ、おしっこ今ぴょろって、ぴょろってでちゃうよ。
「それではいくぞ」
『お~け~』
うわ~なんて言ってる隙に展望台の縁まで運ばれて来ちゃったよ。
「せ~の」
本気?ねぇ本気なの?胸触ってもいいからさ、許してよ~。
『い~ち』
あっ今ミシって、今ミシって変な音しなかった?
『にぃ~の』
ちょっとちょっと高いって超高いって!ほら下見てみてよ、高過ぎるでしょ。
『さぁぁぁ~ん』
本当にもうっ、あーやめてぇぇぇ~!
あれ!?私、飛んでいる!この広い空を飛んでいる!
まるでわたぐもの様にふわふわ……なんてしない!
落ちてる、落ちてる、落ちていくぅぅぅ……
「ハッ……」
~起床~
私は目覚める、なにやら悪い夢をみていた気もするけどはっきりとした記憶はない。
私はふと考える。あれは予知夢なんじゃないかって。
そして私は考える。予知夢だとしたら未然に防がなくっちゃ駄目だよなって。
そう!こういう時はやっぱりタロット占いに限るよな。
私はテーブルからタロットを持ち帰るとその中から22枚の大アルカナを抜き出しベットの上に広げた。
ゆっくりと両手でのの字にシャッフルすると、その混沌とした運命の渦から一枚を引き出す。
私はゴクリと唾を飲み込みゆっくりとそれを捲る。
うわっ!
そのカードは私の手から離れるとはらりと落ちてベットの上に横たわった。
それは【ⅩⅢ 死神】のカードだった。
カードに描かれたドクロの漆黒の瞳が私を見つめている。
うわ~以前にもこんな事かあった気もする……デジャヴ?まぁよくある事なんだな。
はっ!……よく考えたらそんな事より、早急に済ませなきゃならない最重要課題に気付いた。
私は……
★トイレに直行してから、キッチンに向ったんダナ。
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