√32「スオムスに架かる友情の橋」
私は溢れ出るリビドーを爆発させたんダナ。
「みっ宮藤!牛乳が、牛乳が口から滴れてルゾ」
私はそう言いながら宮藤の口元に手を添えた。
……はっ何やってるんだ私、これは私の意志じゃない体が勝手に動いただけだかんな!
「ちっ違うんだ宮藤、これはそういう意味じゃなくテ」
「エイラさんも牛乳好きなんですね、でも私は牛のお乳よりもエイラさんの……おっぱいの方がも~っと好きです!」
「ちょっちょっと待てっテ、違っ……ひゃんッ」
「実はお風呂で背中を流していたあの時も、ずっとエイラさんのおっぱいの事だけ考えていたんですよ、ふふっ」
弁解虚しく私は押し倒された。
挙句に上着とブラは同時に剥ぎ取られ露となった胸は既に舐めずり揉みしだかれていた。この間僅か0.3秒。
こいつはプロだ!単なる耳年増でヘタレで経験ゼロの私なんかが適う相手じゃない。
このままじゃ私が喰うわれる早く逃……ゲェェェーッッッ足のロックが完璧に極まっている!これじゃ逃げられない!
「ふふふっ無駄ですよ、私の必殺技‘桜花☆五芒星’から逃れるすべなんて存在しないんですから」
「オッ、オウカゴボウセイ!?」
両足で相手の動きを封じ込め、それでいて両腕と舌を自在に操り三点同時に相手の胸を攻める。なんて完成された形、つまりパーフェクトフォームなんだ!
獲物を捕獲する海星の如く相手を薄紅色に染め上げ快楽の桜花を乱れ咲かす。その名通りの必殺技だ。
このままじゃ私の意識が危うい誰か助け……誰か来たリーネだ助かった。
「何やってるんですかエイラさん!お風呂上がりにそうして貰うのは私の特権なのに!」
「おまえ達、風呂上がりに毎回こんな事してたのカヨ!それより宮藤を早くなんとかしてクレ!」
「早くどいて下さい!」
「いやだからリーネ、宮藤を早くどかしてくれッテ!」
この騒ぎを聞き付け他のみんなも集まって来た。助かった、今度こそ助かったぞ。
「ミンナ助け……」
「助けて下さい!私エイラさんに無理矢理押し倒されて」
「なっ何言ってるンダ宮藤!押し倒されたのは私の方ダロ」
「その態勢でそう言われても……なぁ」
「説得りょくが……ねぇ~」
「こっ、これは正しくブロッサム・ペンタゴン!まさかこんな所に幻と言われたこの技の使い手が実在していたとは!」
「エッ!?エーッッッ!」
気付くと私と宮藤の体位は入れ替わっていた。ご丁寧に私の手の掌は宮藤の胸元に添えられている始末だ。
うぎゃ~宮藤、こいつは鬼だ!悪魔だ!死神だ!間違いない占いの【死神】は紛れもなくこいつの事だ。
こんな可愛い顔してるくせに平然と私に罪を擦り付けようとしていやがる。
よく見ると目に薄らと涙まで浮かべて、おまけに演技派かよ!
「リーネ、おまえは見てたダロ?なんか言ってクレ」
「犯人はエイラさんです!間違いありません」
「私、もうお嫁にいけない……」
「芳佳ちゃんは私のお嫁さん、いいえ私が芳佳ちゃんのお嫁さんになるから泣かないで!」
「ちょ……ナンダヨ!」
宮藤とリーネは抱き合って泣き出す。なんだよ宮藤その涙は!どっから出てんだよ。
それからリーネ、犯人はないなだろ犯人は!そしてさり気なくプロポーズするな!
「前々から怪しいとは思ってたんだよな~ルッキーニこの変態に近寄るんじゃないぞ」
「あ~んシャーリーあたしこわいよぉ~むふふぅん」
そう言いながらルッキーニはシャーリー大尉の胸に顔を埋める。
おまえ達には言われたくないよ!
「こんな変態な方に背中を流されていたと思うとぞっとしますわ、わたくしもう一度お風呂に行って身を清めて参ります」
「あ~そういえばさ~わたしもお風呂覗かれた事あったな~」
『やっぱり!』
「ちょっと、あれは単に私が風呂入ろうとしたら先にハルトマンがいただけの話ダロ!」
ペリーヌの事については言い訳しないけどさ。
なんなんだこの雰囲気は!そんなに普段の私は信用なかったのか?日頃の私の行動は怪しかったのか!?
自己嫌悪で頭が痛い、なんだか私が宮藤を押し倒したような気にすらなって来た。
「たっ確かに誘ったのは私からかも知れないケド、少なくとも共犯扱いにしてクレ」
「そうなんだエイラが押し倒したんだ……私、信じてたのに……女の子なら誰でもいいんだね……不潔よ」
「ちょっ、違っ、サーニャ!誤解だッテ!今の嘘ダカンナ!」
「あぁ~エイラがサーニャ泣かした~」
「変態の上に嘘つきでいじめっ娘とはもはや鬼畜だね、鬼畜だよ鬼畜」
みんなの煽りがサーニャの涙を加速させる。
うぎゃぁぁぁ~サーニャが、サーニャが泣いているぅぅぅ。
これは悪夢に違いないんだな。頼むから悪い夢なら早く覚めてくれ……
~一ヵ月後~
夢じゃなかった……
あの後、サーニャは一言も口を聞いてくれなかった。
なにか汚らわしいものを見るかのような彼女の視線に耐え切れず、私はここスオムスへと帰って来ていた。
だがしかし、このスオムスも私にとって安息の地とは言えなかった。
人の噂というのは音速も時には光速をも超えるもの、同僚を押し倒し部隊を追われた不幸な魔女の噂はスオムスにも伝わり広まっていた。
ユーティライネン少尉に触れると不幸が染ると、今やスオムス一有名人の私に誰も近寄ろうとはしなかった、一人を除いては。
そんな私に以前と変わらなく接してくれたのは親友のニパだけだった。人間不信となった私の心を彼女は優しく包んでくれた。
暗闇のどん底にいた私にとって彼女はとても輝いて見え、以前の様に卑屈な影は不思議と見えなかった。
501部隊の連中とのあんな嘘臭い友情なんて糞食らえだ、私にはニパがいる私はニパと共にに生きて行くんだ!
「ニパが親友で本当に良かった、アリガトナ」
「お礼を言うのはこっちの方ダヨ、イッル‘ついてないユーティライネン’が親友で本当に良かっタヨ」
……え?
‘ついてないネン・コンビ’の伝説が今、幕を開けようとしていた。
エンディンクNo.07「スオムスに架かる友情の橋」
~おしまい~