トモコ44二式


 扶桑に帰ってきてしばらく経って、落ち着いた生活に私は戻った。
 でもそんな穏やかな時間は、私に寂しさをもたらすのだ。
 離れ離れになったみんなのことを思うと夜も眠れない。
 どんなに我慢をしてもつい、涙で枕を濡らしてしまいそうになる。

 シャーリーさんが恋しかった。
 リーネちゃんが恋しかった。
 ミーナ中佐が恋しかった。
 バルクホルンさんが恋しかった。
 エイラさんが恋しかった。
 サーニャちゃんが恋しかった。
 ペリーヌさんと、ハルトマンさんと、ルッキーニちゃんはなぜだかあまり恋しくなかった。

「でもみんな、私は大丈夫だよ!」
 私は布団から起き上がった。
「だって私にはこれがあるから!」
 私は押し入れを開けた。

「この穴拭智子の1/1スケール扶桑人形があるから!」

 なんでもこの扶桑人形の智子さんは、通称を脱痴猥婦(だっちわいふ)というらしい。
 また宮藤さんに助けられました(ウォーロックの一件のことだ)、
 と赤城の艦長さんがお礼にとプレゼントしてくれたものだ。
 乗員全員で話し合って決めてくれたという。
 私は喜んでそれを受け取った。
 でもそのとき、ミーナ中佐はあまりいい顔をしなかった。
 というより、赤城の艦長さんを見る目が妙に冷たかった。
 赤城の艦長さんが帰ると、そんなもの捨ててしまいなさい、とミーナ中佐は吐き捨てた。
 でも私には、そんなことは絶対にできなかった。
 たとえ抗命罪で軍法会議にかけられたとしても、だ。
 私は全力で智子さんを隠し通した。

 帰国の際、厳重な手荷物検査がされることになった。
 見つかってしまったら、きっと捨てられてしまう……!
 そこで私は、とっさに機転をきかせた。
 なんと一緒に帰る坂本さんの車椅子に智子さんを隠したのだ。

 そしてその智子さんは今、私に抱きかかえられている。
 智子さんを布団の傍らに並べると、私も布団に入った。
 私は智子さんを見た。
 智子さんは半纏を着ている。だってこれから寝ようとしているのだから。
 なんでも実際の穴吹智子さんは寝る時は半纏一枚だけなのだそうだ。
 そんなところにもこだわって、半纏もちゃんと付属させるなんて、
 つくった人のこだわりが感じられる。
 人形なのに、まるで本当に生きてるかのようによく出来ている。
 長いまつげに彩られた、凛々しい瞳。
 その瞳がまばたきもしないで(人形だから)、私をじっと見つめてくる。
 ああ、もう……そんな目で見つめられると、私は……!
 智子さん、今日もよろしくおねがいします!

 私は半纏の隙間に手をすべりこませると、智子さんのおっぱいを揉んだ。
 我を忘れて智子さんのおっぱいを揉んだ。
 夢中になって智子さんのおっぱいを揉んだ。
 智子さんはきれいな曲線で結ばれた、かたちのいいおっぱいをしている。
 サイズはバルクホルンさんとエイラさんのあいだくらいだろう。
 ちょっと物足りない気もするけど、ここは扶桑だ。ぜいたくは言ってられない。
 はりのある適度な弾力。やわらかい。
 体温だってちゃんとある。あったかい。
 すごい! すごいよ! 智子さん! これをつくった扶桑海軍の人!

 興奮する私はたまらず、顔を智子さんの胸の位置までやると、口は迷わず乳房を追いかけた。
 れろ、れろ、とそれを舌でなめまわす。
 刺激をくわえればくわえるほど、乳房から特濃のミルクがあふれだしてくる。
 私はこぼさないように、それをごっくんする。
 おいしい! とってもおいしいよ、智子さん!
 ごっくん、ごっくん、ごっくん、ごっくん。
 ごっくん、ごっくん、ごっくん、ごっくん。
 ぷはぁーっ。
 私の喉が、どんどんどんどん潤っていく。
 私の心が、どんどんどんどん潤っていく。

「ウィッチーズのみんな、今日も宮藤芳佳は元気です!!!!」

 私はおなかがいっぱいになると、そのまま眠りに落ちていった。
 今日もいい夢が見られそうだ。


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