第1手 手をつなぐ
「サーニャ、そろそろご飯ダゾ、食堂行こ」
珍しく寝ぼけ眼じゃないサーニャに声をかけながら
私は数ヶ月振りの思いに胸がドキドキしてた。
――サーニャと手をつないで食堂に行く。
何を今さら、と言われるかもしれないナ。
でも、寝ぼけたサーニャを食堂に連れていくのと、
起きてるサーニャと手をつないで食堂に行くのでは意味が全然違うんダ。
何ていうかその……。
起きてるサーニャと手をつないで歩くなんて、
……まるで恋人同士みたいじゃナイカ。
私は部屋のドアのところでサーニャを待っていた。
いつも通りに。そう、いつも通りに。
サーニャに変に思われないように。普通に、普通に――。
「おまたせ。いこう、エイラ」
私のすぐ近くでサーニャがにこっと笑った。
あー、もう、その笑顔は反則ダゾ、サーニャ。
「ソ、それじゃ行コウカ……」
私はぎこちなくサーニャに手を差しだそうとして……
そして、やっぱり手をひっこめてしまった。
「イ、行くゾ!!」
恥ずかしさをごまかすみたいに一歩先に部屋を出る。
あぁ、やっぱり私はダメだな……。
「あ、待って」
誘っておきながら勝手に行ってしまった私をサーニャが
小走りで追いかけてくる。
そして――
「一緒に行こ、エイラ」
私の右手には、確かなサーニャの柔らかい手の感触。
「キ……、キョウダケダカンナー // 」
思わず口に出した強がりの最後、ちょっと声が小さくなってしまったことにサーニャは気づいてないよナ。
Fin.