第45手 添い寝


空気中の水蒸気さえもが凍りつき、太陽も昇ることを忘れるスオムスの冬。

いくら基地内の防寒機能が優れているからと言って、その寒さはそうそう防ぐことのできるものではない。
あぁ、つまり、それならば、できるだけ暖かいところを寝床としたって仕方がないことなのだ。

そう自らに言い聞かせると、私はある部屋の扉を開いた。
スヤスヤと、どこまでも穏やかに安らかに眠る‘彼女’の姿を視界に捉えると、意味もなく胸に暖かいものが込み上げる。
ゴメンナサイ…今日だけだから…と、すっかりと慣れた言い訳をもって、私はベ
ッドへと潜り込んだ。
その瞬間、‘彼女’の目はいつも通りパチリと開き、私を見つめる。

「今日も来てしまったんですか、エイラさん?仕方ない娘ですねえ。」

ふふっ、そして私をエル姉はいつもと同じ台詞で迎えてくれるのだ。
その頭には、追い返そうだとか、迷惑だとかいった類の考えは全く存在しないようで、どこまでも暖かい。

私はここにいてもいいんですね。
あなたは私を受け入れてくれるんですね。
この広い広い基地の中であなたは私の帰る場所となってくれるのですね。

「エイラさん、魔法を教えてあげましょう。」

エル姉がなんだか得意気に、少し勿体ぶって言葉を紡ぐ。

ふわり。

それはあまりにも唐突で、私を狼狽えさせるには十分であり、しばらくしてやっと、エル姉の腕が私を包み込んでいるのだと気がついた。

「あれ?だめでしょうか…子供のころにお父さんやお母さんにこうしてもらうと心
までぽかぽかしたものですが…。あぁ、やっぱり私なんかじゃダメですよね…。」

あぁ、あなたはどこまで自分を信じられない人なのか…ただ私は注がれたものの
あまりの暖かさにボーっとしてしまっただけだというのに。
そう伝える代わりに、自らもギュッと抱きしめ返す。
伝わっているよ。アナタの暖かさも優しさも、何もかも伝わっているよ。
言葉にしてしまおうかと思ったけれども、それはなんだか気恥ずかしくて、私は睡魔に身を任せた。

Fin.


『ストライクウィッチーズでシチュ題四十八手』応募作品

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